強行指名にも、160キロ右腕の心は揺らがなかった。メジャー挑戦を表明している花巻東(岩手)・大谷翔平投手(3年)は、25日に都内で行われた「プロ野球ドラフト会議

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 TOSHIBA」で、日本ハムから1位指名を受けた。事前の公表で指名されることは分かっていたとはいえ、複雑な表情。現時点での日本ハム入団の可能性については「ゼロ」と話し、あらためてメジャー挑戦の意思を貫く覚悟を示した。

 指名から約10分後の午後5時30分。花巻東の室内練習場に姿を現した大谷は、うつむいていた。数分前に、流石裕之部長(30)から日本ハムの1位指名を知らされた。「評価してくれてうれしく思う」と前置きした上で「どの球団に指名していただいても、アメリカでやる決断をした。両親と相談すると思うけど、意思は変わらない」と断言。現時点での入団の可能性についても「自分の考えとしてはゼロです」と揺るがなかった。

 「発表して、指名されないと思っていた」。21日のメジャー挑戦表明から4日。日本ハムの強行指名は報道を通して分かっていた。心の準備はできていたはずなのに、いざ現実となると「ちょっとビックリして、動揺した部分もある」と視線を落とした。ドラフト候補選手は、テレビ中継を見ながら待機することが多いが、「見ると、心に残るのが嫌だった。その道(メジャー)に進みたいという気持ちでやっていた」。指名の瞬間は、突きつけられる現実を振り払うかのように、降りしきる雨の中でキャッチボールをしていた。

 日本ハムとは、9月26日に大渕スカウトディレクター、今成スカウトと面談した。キャスター時代の栗山監督から取材を受けたこともある。「情熱的な方。チームカラーも良いイメージがある」と好印象を抱く。しかし、周囲が国内プロ入りを勧める中でメジャー挑戦を決断しただけに「そういう話を含めて決断した。アメリカでやりたい気持ちは変わらない」。あらためて強いメジャー志向を示した。

 通常なら今後は指名あいさつ、入団交渉という運びになる。日本ハムは来年3月31日まで「選手契約締結交渉権」を有するが、これはあくまで国内でのこと。日米間には「紳士協定」のみで明確なルールがなく、その間にメジャー球団と契約しても違反にはならない。メジャーに行くなら、少しでも早く契約を済ませ、準備を進めたいところ。大谷本人も「自分が初めてのケースだと思う。紳士協定もあると思いますし、(佐々木洋)監督に調べてもらっているところ」と、困惑の表情を浮かべた。

 「これからどうなるか想像がつかない」という前代未聞の指名。ただ、高校入学時からの夢だったメジャー挑戦の意思は、最後の最後までぶれなかった。【今井恵太】