前代未聞の逆保留だ。中日井端弘和内野手(34)が18日、名古屋市内の球団事務所で契約更改交渉を行った。今季限りで引退した立浪和義氏(40)の後継者と評価すると井端はそれに見合った野手最高額3億円を逆提示し、希望額を用意していなかった球団が「ちょっと考えさせて」と逆に保留するという珍事が起こった。両者に溝はなく、次回交渉予定の来年1月7日に5000万円増の年俸3億円でサインする見込みだ。

 交渉の冒頭、球団側は金額提示の前に、引退した立浪氏に代わるリーダーとして来季はチームを引っ張って欲しいという要望を出した。これを受けた井端がリーダー料も含めて以前から目標にしていたチーム野手最高年俸3億円を提示した。すると交渉にあたった西脇球団代表、井手編成担当から「もう1回考えさせて」と逆保留。結局、金額提示がないまま保留になるという珍事が起こった。

 約30分間の交渉を終えた井端は苦笑い。「金額提示がありませんでした。立浪さんの代わりにチームの顔としてやって欲しいと言われた。そう考えていただけるなら(年俸も)そのように考えてくださいと言ったら『もう1回考えさせて』ということになりました」と言った。

 今季は全144試合に出場して、打率3割6厘、5本塁打、39打点、出塁率3割8分8厘と1番打者の役割を完ぺきに果たした。球団も今季年俸2億5000万円からアップさせたが、3億円には届いていなかったという。逆保留の理由として井端の挙式準備などによる下交渉不足を挙げた井手編成担当は「彼の希望はなんとなくわかる。次回はすんなりいくと思う」と言った。次回交渉で和田(2億8000万円)を抜いてチーム野手最高額となる3億円を提示するとみられる。

 井端は21日からは明子夫人と米国への新婚旅行に出発する。「球団も考えてくれるということなので楽しみです」。年明けに3億円選手となるであろう新郎は満面の笑みで球団事務所を後にした。【鈴木忠平】