3月は年度末とあって、演劇に関係した賞の贈呈式が相次いだ。その中で、印象に残ったのが、「悲劇喜劇」賞を受けた「リチャード二世」の演出家蜷川幸雄さん(80)と、「松尾芸能賞」で大賞を受けた平幹二朗さん(82)だった。

 蜷川さんは昨年12月に舞台の稽古中に体調を崩して入院。そのため、贈呈式は大事をとって欠席したが、式の前に「リチャード二世」に出演した約70人が病院で蜷川さんと面会した。病室ではなく、院内の会議室を借り、簡易ベットに横になった蜷川さんは出演者たちと対面した。その時の写真を見せてもらったが、笑顔でうれしそうに応対していた。そして、元気な声で「嫌いなリハビリも頑張って、4月に必ず戻る」と宣言したという。蜷川さんは胃潰瘍、心筋梗塞、脳梗塞と数々の病気と闘い、その都度、元気に現場に戻ってきた。4月下旬から始まるシェークスピア作「尺には尺を」の稽古での復帰を目指している。

 蜷川さんと数多くの舞台でコンビを組んだ平さんも20年前に肺がんとなり、その直後に予定した蜷川演出舞台を降板した。しかし、その時、蜷川さんに肺がんとは伝えずに降板したため、その後しばらく、2人の関係は絶縁状態が続いた。しかし、がんが完治した後、がんであったことを公表し、蜷川・平のコンビも復活している。贈賞式の挨拶で、平さんは「人生の残り時間も短くなったけれど、命ある限り、せりふをしっかり覚えて、役者としてやっていきたい」と生涯現役を力強く宣言した。数年前、2時間出ずっぱりで、膨大なセリフのある舞台「王女メディア」を卒業すると発表したが、実は昨年、「まだ出来る」と卒業を返上して、再び100ステージ近い舞台を演じきった。

 蜷川さん、平さんともに恐るべき80代。まだまだ、私たちをワクワクさせる舞台を見せてほしい。【林尚之】