<アジアCL:鹿島2-1全北現代(韓国)>◇9日◇1次リーグ◇F組◇韓国・全州

 鹿島の若きMF遠藤康(21)が「救世主」となった。F組の鹿島がアウェーで全北現代(韓国)と対戦し、1点を先制されながらも逆転勝ち。終了間際に途中出場の遠藤が、値千金の逆転弾となる公式戦初ゴールを決め、鹿島に97年11月15日以来となる韓国勢からのアウェー勝利をもたらした。鹿島は2連勝で勝ち点を6に伸ばし、単独首位に浮上。

 チームメートの歓喜の輪に押しつぶされた感触が心地よかった。プロ入り4年目。待ちに待った公式戦初ゴールが、鹿島に12年半ぶりの韓国勢からのアウェー勝利をもたらす値千金弾。「救世主」となった遠藤は「何がなんだか…。覚えてないんですよ」と笑った。

 一瞬のスキを突いた。途中出場で登場した4分後の後半45分。MF小笠原のパスを受けてスルスルとペナルティーエリア内に進入すると「あそこは右足しかなかった。左足に持ち替えたらダメだと思った」。利き足ではない右足で、冷静に逆転ゴールを流し込んだ。

 昨年4月25日のアウェー山形戦。途中出場で振るわず、地元仙台から駆けつけた両親に「サッカーを辞めたい」とメールしたほど落ち込んだ。2月13日の水戸戦では63メートルのゴールを決めながら「FWマルキーニョスからパスが来ない。まだ信頼されていない」とこぼした。そんな悔しさを胸に練習に取り組んできた結果が、ついに出た。

 日本代表のDF内田が「ヤス(遠藤)の声は寮に響き渡る」と苦笑いするほど、チーム随一のムードメーカーだ。だが、ピッチ上ではひたむきに走り回るから、内田は「一番嫌な選手?

 何をやるか分からないという意味でヤス」と実力を評価。この日、後半24分に同点弾を決めたMF中田も「今日はヤスに聞いて。昨季からきちんと練習してきたヤスが結果を出したのは、他の選手へのメッセージにもなる」と称賛した。

 6日のリーグ開幕の浦和戦では、途中出場でダメ押し点をアシストするなど、G大阪MF遠藤ではなく、「鹿島の遠藤」も存在感を増している。「ゴールはおまけ。みんなが出たいと思っている中で練習して、結果が出てうれしい。次も期待にこたえられるように点を取りたい」と言い切った。チームは2連勝で単独首位に浮上。若きMFの飛躍が悲願のアジア制覇への勢いを加速させる。【菅家大輔】