鹿島のW杯代表DF内田篤人(22)に、ドイツ・ブンデスリーガの名門シャルケから獲得の正式オファーが届いたことが12日、分かった。今季リーグ2位の同チームは、来季の欧州チャンピオンズリーグ(CL)にも出場する強豪。内田も09年12月に渡欧し、試合を観戦していた。マガト監督はボルフスブルク時代に日本代表MF長谷部を指導した経験もあり、日本人への理解も深い。鹿島側は16日のリーグ名古屋戦終了後にも交渉の席に着く構えで、移籍が決まれば、W杯後に日本人サイドバックとして初めて欧州4大リーグに挑戦することになる。

 W杯に臨む岡田ジャパンの若き右サイドバックに、ドイツの名門シャルケから正式オファーが届いた。鹿島関係者はこの日までに「16日の名古屋戦までは試合に集中したいので、名古屋戦後にリーグ中断期間に入ってから、交渉をしたいと思う」と慎重に話した。交渉が成立すれば、W杯後に欧州デビューすることになる。

 内田は06年に鹿島入団後、年々海外志向が強くなり、09年12月にはオフの旅行で渡欧し、シャルケ-マインツ戦を観戦。「スタジアムの雰囲気が本当にすごかった」と本場の空気を体感した。シャルケのマガト監督は、ボルフスブルク監督時代に長谷部、大久保の日本代表2人を指導し、日本人のメンタリティーを把握。ボルフスブルク監督に就任した07年夏にトゥーロン国際で内田のプレーを直接視察した際に高評価しており、海外初進出の内田にとって理想の指揮官といえる。

 現在、攻守に高い能力を持ち、時には試合の流れをコントロールする資質も必要とされるサイドバックは、欧州トップリーグでは重要なポジションとされる。その状況下で、日本人サイドバックの内田に白羽の矢が立ったことは、シャルケ側の高い評価の裏返しといえる。

 内田は鹿島でリーグ3連覇に貢献。日本代表の不動の右サイドバックに成長した。昨季からプレー中に嘔吐(おうと)の症状が見られ、右ひざ半月板を痛めるなど苦しい状態の中で試合に出続けているが、自慢のスピードは欧州でも通用するはず。かねて鹿島関係者も「結果を出してきて、W杯に出ることになれば、国内でやり残したことがなくなる。その中で海外という話が来れば、じっくり話し合ってあげたいと思う」と話している。鹿島にとって貴重な戦力ではあるが、移籍については考慮するスタンスだ。

 シャルケ側からは完全移籍で複数年契約を打診されているもよう。内田は08年末に鹿島と結んだ4年半の複数年契約が約3年残っており、交渉の席では違約金などの額や条件面などの細部が話し合われる見込みだ。移籍が実現すれば、本職の日本人サイドバックが、欧州主要トップリーグに初挑戦を果たす。シャルケは今季リーグ2位で来季の欧州CL出場権を獲得しており、欧州の頂点を競う舞台に立つ可能性もある。10日の代表発表から一夜明けた11日には「今は鹿島での試合のことしか考えていない」と話していた内田。目の前の勝利に貢献した先には、W杯、そして新たな戦いの場が見えてくる。