ん、あれって川内!?

 公務員ランナー川内優輝(26=埼玉県庁)が、戦闘モードに突入した。今日28日に行われる釧路湿原マラソンの30キロの部出場を翌日に控えた27日、空路で北海道・釧路入り。世界選手権(8月10日開幕、モスクワ)に向けた最後の調整レースを前に厳戒態勢を敷いた。

 夏休みを楽しむ観光客の中に、鼻が隠れるほど目深に帽子をかぶった男がいた。視線を上げず3人の男たちと足音を消して空港内を進む。通常の出口ではなく、人影の少ない駐車場出口に直行。声をかけられると、いきなり迎えの車にめがけて猛ダッシュ。ほとんどの客に存在を気づかれないまま空港内をすり抜けた。

 「何とか頑張ります」

 いつもの歯切れよい口調ではなく、言葉も極端に少ない。車に乗っても両手で帽子を押さえ顔を隠した。

 勝負の時は近づいている。前走の21日、北海道・士別ハーフマラソンでは30度近い暑さもあって22位と不本意な走りだった。最後の調整レースで同じ過ちは繰り返せない。レース当日の釧路は最高気温22度の予想。モスクワの8月平均最高気温と同じ条件だ。「仮想モスクワ」のレースを控えて、本番さながらの緊迫感を漂わせた。【益田一弘】