選手15人の名前を公表すべきか否か。女子柔道日本代表の暴力、ハラスメント問題が新たな局面に突入した。日本オリンピック委員会(JOC)緊急対策プロジェクトの橋本聖子氏(48)が6日、「非常に大きな問題」と匿名のまま調査することの難しさを口にすれば、告発した選手側の代理人も氏名公表の再検討を示唆。JOC女性スポーツ専門部会の山口香部会長(48)は「(公表は)時期尚早」と話したが「顔が見えない告発」の影響力の大きさに、戸惑いを隠せなかった。

 女子代表監督ら3人が辞任、強化体制の見直し、第三者委員会の設置-。全日本柔道連盟(全柔連)を揺るがした選手15人の告発の影響が、今度は選手自身にも及んだ。この日午前、橋本氏が「プライバシーを守りながらヒアリングをしてほしいというのは、決していいことではない」と氏名を公表すべきととられかねない発言をすれば、選手側代理人も「ずっと匿名でいくのは、理屈の上でおかしいのは分かっている」と苦しい状況を明かした。

 告発した選手が表に出ないまま、次々とスタッフが辞任する事態を疑問視する声もあがってきた。この日の女性スポーツ専門部会後に会見した山口氏は「(告発選手の)顔が見えないという批判もある」とした上で「これほどの騒ぎは、選手の本意ではなかった」と15人の気持ちを代弁した。影響が大きくなって、選手も戸惑っている。「選手を守れる担保がないまま、氏名を公表するのは時期尚早」という考えも示した。

 夕方になって、橋本氏は「氏名を公表しないことについて厳しい意見もあることから、今後どういう方法で選手を守りながら、これまでの経緯や事実を明らかにするか検討すべき」とコメントし、公表の是非に慎重な姿勢をみせた。全柔連の上村会長も「我々が知りたいのは告発した選手ではなく、その意見。特定しなくてもいい」と話した。

 15人の中には「ヒアリングの時に全柔連関係者に立ち会ってもらってもいい」と話している選手もいるという。今後は、15人の選手の中から「名前を出しても」という選手が出てくる可能性はある。しかし、その一方で競技者としての将来を危惧して「匿名」にこだわる選手がいても不思議ではない。「柔道界、スポーツ界の改革にポジティブに取り組んでいきたい」と山口氏は話し、全柔連も組織改革の必要性を認識し始めている。まだまだ問題は山積している。【荻島弘一】