<フィギュアスケート:ジュニアグランプリファイナル>◇最終日◇12日◇スペイン・バルセロナ

 男子フリーが行われ、全日本ジュニア選手権を制した宇野昌磨(16=愛知・中京大中京高)がショートプログラム(SP)3位から逆転し、合計238・27点で優勝した。163・06点だったフリー、合計ともにジュニアの世界歴代最高得点を更新。浅田真央(24)に見いだされた新星が、05年の小塚崇彦、09年の羽生結弦に続く日本勢3人目の王者となった。

 信じられないように、宇野は口を開け、中空を見つめていた。「自分でも感動しました」。自らも驚くような、会心の出来。スタンディングオベーションで熱狂するスペインの観客に何度も頭を下げ、達成感に浸った。冒頭の4回転トーループとトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)。今季身に付けた大技をダイナミックに振りかざし、ジュニアの頂点に君臨した。

 名古屋市立冨士中卒業時の身長は141センチ。小柄で機敏な動きが持ち味だったが、この1年半で158センチに。昨年の声変わりも経て、少しずつ男子の豪快さも加わってきた。基礎点が1・1倍になる後半に集めた5つのジャンプでは、すべて加点を引き出し、表現力を評価する演技構成点は1人だけ70点超えと成長著しい。

 5歳の時、近所の名古屋スポーツセンターに遊びに行った。伊藤みどりさんを育てた山田満知子コーチのお膝元。そこで1人の中学生に声を掛けられた。「かわいい!

 スケートやりなよ」。それが当時山田コーチに指導を受けていた浅田真央だった。誘われるままに教室入り。いまや同コーチの秘蔵っ子となった。

 実は踊ったり、目立つのが嫌いという。ただ、「陸上ではめっちゃ恥ずかしいですが、氷上では恥ずかしくない」。学校の学芸会では「一番せりふの少ない役を選ぶ」が、リンクでは主人公。運動神経も陸の上では並以下だが、スケート靴を履けば人一倍。浅田がスカウトしたのは、そんな「氷の申し子」だった。

 理想像は「高橋大輔さん」。ジュニアでは珍しく踊って跳べるが、ダンス嫌いな16歳。「あと3年半ですね」と意識する18年平昌五輪に、照準はピタリ。まずは年末に控える全日本選手権(26~28日、長野)へ、「このままでは戦えない。もっともっといろいろな面に磨きをかけたい」。羽生をはじめ、強豪がそろう先輩たちを驚かせにいく。

 ◆宇野昌磨(うの・しょうま)1997年(平9)12月17日、名古屋市生まれ。5歳で競技を始める。山田コーチが指導するグランプリ東海クに所属。12年冬季ユース五輪2位、14年全日本ジュニア優勝。13年全日本選手権ではSP6位発進でフリーでは演技順で最終グループに入り、7位と躍進した。今季はジュニアGPシリーズ2戦で1位、2位となり、ファイナルに進出。趣味はゴルフ。158センチ、43キロ。