初場所に進退をかける横綱朝青龍(28=高砂)が、インターネット上の掲示板で殺害予告を受けていたことが12日、分かった。この日、警視庁本所署が捜査に乗り出していることを明かした。初日の11日午後、サイト上に「両国国技館に殺しに行く」などと書き込まれた。同サイトを発見した本所署は11日に日本相撲協会に連絡し、高砂部屋に出向いて警戒と防犯の徹底を喚起していた。一方、朝青龍は騒動にも動じることなく、2日目に琴奨菊(24=佐渡ケ嶽)を突き落としで破り、昨年秋場所以来の連勝スタートを切った。

 進退をかけて初場所に出場した朝青龍が、思わぬ被害に見舞われていた。警視庁本所署が11日に、ネットサイト「2ちゃんねる」内に「(11日午後)5時45分、朝青龍を国技館に殺しに行く」という内容の殺害予告文を発見。捜査に乗り出すとともに、周囲へ警戒と防犯を呼びかけていることが明らかになった。

 予告文にあった11日同5時45分に、朝青龍は初日の土俵に向かうため、一般客の入れない西支度部屋で気持ちを高めていた。多くの観客が見守る中での入場でも異常はなかったが、同署によると「同6時すぎに相撲協会に連絡し、警戒と防犯指導を行うために高砂部屋へ向かった。横綱の復帰を快く思わない者の嫌がらせではないか」という。

 初日を白星で飾った朝青龍は午後6時半ごろ高砂部屋に戻った。その5分後に警察官が自転車で駆け付け、部屋の前で待機していた報道陣に「どこの社ですか?」と確認した。さらにパトカーも到着。計5人の警察官が道路の曲がり角に立って周囲をうかがった。その後、乗用車できた私服警官3人が部屋に入った。中での詳しいことは分からないが、若手力士や関係者に防犯指導を行ったようだ。

 一方、朝青龍は同7時10分すぎに部屋から出て来て、部屋を訪れていたモンゴル人の知人と抱擁しながら別れるなどリラックスした様子で、そのまま車に乗って部屋を後にしたという。高砂親方(元大関朝潮)はこの日、「警察は私が部屋にいないときに来たようで、詳しいことはマネジャーを通じて今日(12日)聞いた。今のところ特別な対応は考えていないが、本所署からは『警戒、警備を強める』ということを聞いている」と話した。

 すでに予告文は削除されているが、今後について同署は「護衛付きで送迎するようなことは考えていない。ただし引き続き捜査と(朝青龍)ご本人と周囲の方への警戒、防犯指導態勢を強めていく」と話した。一方で朝青龍に近い関係者は「大きな騒ぎにはしたくないが、心配な面もある。警察はこういう問題をあやふやにしないでほしい」と警戒を緩めなかった。

 朝青龍はそんな騒動にも動じることなく、初場所2日目も琴奨菊を突き落とし、幸先よく連勝スタートを切った。ただ、進退をかけた場所の異様な盛り上がりが、思わぬところに飛び火したことで、土俵のみならず私生活でも注意を払わなければならなくなった。