阪神矢野監督が4回、高橋遥に代打鳥谷を告げた時にびっくりした。先発であれだけいい球を投げていたのに、こんなに早く代えてしまうのかと。ただ、あの“攻め”の采配もリリーフ陣を本当に信頼しているからこそできるのだ。

その中継ぎ陣の1人、左腕岩崎が2イニング目の7回につかまった。2安打と四球で満塁とされ、三塁北條の失策で同点となった。岩崎の球は抜けていたし、なぜ点を取られる前にドリスを投入しないのか不思議だった。だが矢野監督は「1年間よく投げてくれた。ここもお前に任せる」と岩崎を引っ張り続けた。指揮官がかたくなに選手への信頼を貫き通し、なおかつ最終的に勝ちきってしまった。その姿に感動した。

矢野監督は東北福祉大で私の後輩だった。当時から私生活でも野球のリードでも1つ筋の通ったところがあった。ただ、その頑固さはちゃんと理由のあるものだった。

今日のDeNA戦で岩崎を引っ張ったのは、シーズン中から彼の力を見極めてきて、100%信頼しているから。そして岩崎本人もこういう使われ方をすれば「ファイナルでも監督のためにやってやる」という気持ちになるだろう。

この3試合を見て、阪神はすごくしっかりした野球をやっていると感じた。犠打で送るところはきっちり送るし、盗塁など足も使える。加えて監督と選手が信頼で結ばれている。巨人との決戦でもひと暴れしそうな雰囲気がある。(日刊スポーツ評論家)

DeNA対阪神 DeNAに勝利し藤川らナインを出迎える矢野監督(撮影・加藤哉)
DeNA対阪神 DeNAに勝利し藤川らナインを出迎える矢野監督(撮影・加藤哉)