コロナ禍で迎えた異例のシーズンで、矢野阪神がつまずいた。投打で巨人に圧倒され、20年ぶりとなる悪夢の開幕3連敗。巨人との開幕カードに限れば、球団史上初の屈辱だ。新型コロナウイルス感染から復帰した日刊スポーツ評論家の梨田昌孝氏(66)がリモート評論し、猛虎の現状を分析し、打開策を提言した。

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まさかの開幕3連敗だった。打線の大幅改造に踏み切ったが、「スミ1」の完敗。巨人との3戦は「4対21」と力でねじ伏せられた。

梨田 阪神にとっては痛すぎる3連敗だ。シーズン「120試合制」でスタートが大切なのはどのチームも同じだが、いきなりつまずいた。巨人のいいところばかりが目立ったのは、逆に阪神がスキをみせた結果ともいえるだろう。

矢野監督はわずか2戦で早々と4番ボーアに見切りをつけた。新外国人を「6番」に降格、今季の“売り”だった2番近本を「1番」に起用。監督の意図と心理はどうだったのか。

梨田 早い時期から「2番」「4番」は固定する姿勢をみせていたので驚いた。たった2試合だが、思ったように点がとれないと踏んだのだろう。おそらくコーチ会議でもボーアの4番起用に反対の声もあがったのではと想像する。走者をためてつなぎの野球ができない以上、早々と変更せざるを得なかったということだ。

しかし指揮官の決断は勝利につながらなかった。ボーアが6回の満塁機に打席に立つと、左の高木を投入されて二ゴロ凡退。計12打数ノーヒットの惨めな姿をさらした。先発ガルシアも中盤につかまって、近本のソロ本塁打の1点のみで、投打にかみ合わない。

梨田 ボーアはノータイミングだった。右投手にも左投手にもタイミングがとれていない。もう少し早くテークバックをとるようにアドバイスしているとは思うが修正が必要だろう。ガルシアはストライク、ボールがはっきりしていた。ただ4回の岡本に2ランを浴びたところまでは仕方がなかった。でもわたしがスキをみせたといったのは、その後の動きだ。

4回。岡本の右越え本塁打の後、1死二塁からパーラに適時中前打を放たれた。続く小林への死球と犠打で、2死二、三塁から代打北村、坂本に連続タイムリーを浴びる。

梨田 パーラの浅い中前打を処理した近本がホームに送球するが、中継プレーでカットマンは見当たらず、それが間に合わないと判断した(捕手の)坂本にしても、もっと前にでて打者走者(パーラ)の二進を防ぎたい。また小林に死球、サンチェスに簡単に犠打を成功された後で点を奪われたのは最少失点で乗り切りたかった。

また、この開幕カードは梅野、原口、坂本と、3戦ともスタメン捕手を替えた。チームは23日からのヤクルト戦(神宮)で巻き返しを図りたい。

梨田 神宮、横浜と狭い球場が続くから、ボーアは使いたい。全体的に振れていないのは確かだが、チームとして「つなぐ」という意識も再確認したい。また投手との相性も理解はできるが、レギュラー捕手の梅野を固定すべきだろう。責任を持たせて、(控えで)逃げ道をつくってはいけない。22日はゲームがないから、うまく気持ちを切り替えたいものだ。

【取材・構成=寺尾博和編集委員】

▼阪神は開幕から、先発捕手を第1戦=梅野、第2戦=原口、第3戦=坂本と3選手起用。2リーグ分立後では球団初となった。