阪神尾仲祐哉(2019年3月6日撮影)
阪神尾仲祐哉(2019年3月6日撮影)

目の色が違った。阪神に移籍して2年目となる尾仲祐哉投手(24)の表情だ。春季キャンプは沖縄・宜野座には参加できず、高知・安芸で2軍スタート。逆襲を胸に誓って、黙々とトレーニングに励んでいた。

「チャンスが来ると思って、自分は準備するだけ。去年は12試合(登板)だったから、今年はもっと多く1軍に居られるようにしたい」

大和がFA移籍した際に、DeNAから人的補償で阪神に移籍。シーズン中盤に1軍昇格を果たすと、救援で12試合に登板。主にビハインドの展開でマウンドを任されることが多かったが、テンポのいいピッチングで、チームに流れを引き寄せるシーンが目立った。

移籍1年目を振り返る24歳は「正直、焦ったのはある。移籍したときは、チームのことが何もわからずで、あいさつすることで精いっぱいだったもんね」と、今はチームになじんだ様子だった。

投球時は、マウンド上の尾仲は極限まで集中を高めて「ゾーン」に入っている。「あんまり記憶は残ってないね。抑えたときも、打たれたときも。中継ぎは3つのアウトを、いかに取るか。3アウト目を取って、ベンチに走って帰ることだけが頭にあるから」。ブルペンで肩を作り、リリーフカーへ。目前の打者を抑える-。そこにしか興味がない。

そんな尾仲だが、鮮明に記憶に残っている1球がある。「素直に悔しかったから。交流戦の札幌。レアード(現ロッテ)の1球。あれは、打たれたシーンを完璧に覚えてる」。6月13日の日本ハム戦(札幌ドーム)、3-4と1点ビハインドの4回2死二、三塁。カウント1-1からの3球目。思い切って腕を振って投じた、高めの真っすぐを捉えられた。インパクトの瞬間、尾仲は振り向いた。左翼席への着弾を見届けると、がっくりと肩を落としてレアードが走るのを横目に見た。3ランを被弾して、交代を告げられる。「やり返したい。あの悔しい思いを持って、今年も頑張りたい」。

今月6日の甲子園練習から1軍に合流。藤川、ドリス、桑原、能見…。虎の救援陣は競争が激しいが、そこに尾仲も割って入りたいところ。心残りの1球を胸にしまい込んで-。じっくりと花を咲かせる準備はできている。【阪神担当 真柴健】

阪神尾仲祐哉は日本ハム・レアードに3点本塁打を浴びる(2018年6月13日撮影)
阪神尾仲祐哉は日本ハム・レアードに3点本塁打を浴びる(2018年6月13日撮影)