マウンドから、スラッとしたスタイルで両腕を上げる。長い手足を生かしたワインドアップ投法で、オリックス増井浩俊投手(36)は、新たな道を歩む。

ワインドアップは昨季途中に「リラックスして投げられる」と好感触を持っていたが、一時的に封印。前回先発した5月30日ヤクルト戦(京セラドーム大阪)から再披露した。

「先発で投げる場所を確保してもらって、このチャンスを生かせるように」

残りはヤクルト戦での白星だけとしているNPB史上初の「12球団勝利&12球団セーブ」は惜しくも逃したが、復活させたワインドアップで5回3安打2失点とゲームを作った。

貪欲に生きる。昨年の春季キャンプで腰を二塁方向にひねる「トルネード投法」に挑戦し「真っすぐで勝負したい。もっと強く投げることを目指している」と話していたように、今回も「直球の質」を求めたフォームチェンジだった。昨季途中、本格的に先発へ再転向。日本ハムの新人だった10年以来で、それを機にカーブを再習得した。「実は投げるのが得意で、高校の時からずっと投げていた。なかなかリリーフでは勇気を持って投げられなかったんですけど先発だと投げられるので。そこをうまく使えれば」。直球とカーブで緩急を生み、こちらも先発再転向後に習得したシュートにチェンジアップ、代名詞のフォークで組み立てるスタイルを確立してきた。

ギアを入れ替える。日本ハム時代に最優秀中継ぎに輝くなどリリーフとして2球団で通算157ホールド、163セーブを記録した。その増井が今、救援の心持ちで、真っさらな先発マウンドに向かっている。

「やられるときは初回から捕まってしまうイメージ。長いイニングだとかは考えずに、1イニングずつ全力で行けるところまで」

次回先発の6日中日戦(バンテリンドーム)では7年ぶりの楽しみもある。セ本拠地で打席に立つ。プロ12年目でこれまで通算7打席あり、6打数2安打の打率3割3分3厘。新人時代に5打数2安打。そして最後は14年8月16日の西武戦で、8-8の延長11回2死満塁で平野相手に2球空振りして1球ボールを見送った後、145キロ直球に二ゴロだった。一塁でアウトになった全力疾走を「西武戦ですよね。(打席に)立ちましたね」と今も覚えている。「めったにない機会なので楽しみ。打てなくて当然の中で打席に入れるので、気持ちも楽に楽しめる。今回は(バットを)作っていただきました。なるべく軽く(オーダー)しました。レガースも作ってくれましたね。色はグローブの色に合わせてくれました」。グレーの装備で打席に入る。

もちろん「投げることが、まず第一の仕事」と本職に専念する。今季初戦で勝った後、6試合続けて白星がなく「しっかりゲームを作れるように集中して頑張ります」と気合十分。18年にFAでオリックスに加入。4年契約の4年目。必死に生きる。【オリックス担当=真柴健】