高校野球鳥取大会の米子松蔭と境の一戦は、日本中で多くの話題を呼んだ。米子松蔭の関係者が新型コロナウイルスに感染した影響で、17日に予定されていた2回戦の不戦敗が決定。しかし、ツイッターで同校の西村虎之助主将(3年)の再出場を訴えた悲痛な叫びに各界の著名人などが反応し、鳥取高野連が対応。境が再試合を承諾したことで、不戦敗が取り消された。22日に行われた仕切り直しの試合は、米子松蔭が逆転サヨナラ勝ちで準々決勝に進出を決めた。

世間の耳目を集めた一戦に、米子にゆかりのある広島九里亜蓮投手(29)も熱視線を送っていた。米子で生まれ、中学時代を米子で過ごした右腕は、一連の報道を受けて「このご時世で難しいですけど、不戦敗の決定からいろんな声が上がって、大会に出場することができたのは安堵(あんど)していると思う。最後まで思い切ってやるのが一番いいのかなと思います」とエールを送った。

西村主将の勇気あるSNSの1つの投稿が、多くの人を動かした。九里は「その行動を取ったことはすごいこと」とたたえながらも、「逆に『そういう風な行動をさせてしまった』と思う人はたくさんいると思う。(不戦敗よりも)何か違ったやり方がなかったのかなということを、高野連、関係者の方も感じていると思う。考えさせられる行動の1つだったと思います」。高校生につらい思いをさせないための、高野連の対応の改善を待ち望んでいる。

九里は再試合を受け入れた境の部員の気持ちもおもんぱかった。「境高校の部員も、誰1人として不戦勝で勝ち上がりたいという気持ちは思ってなかったと思う。負けてしまった悔しさはあると思いますけど、何年、何十年後かになるかもわからないですけど、誇りを持てる良い話に変わっていくんじゃないかなと思いますし、そうなってほしいと願ってます」と話した。

勇気ある行動に始まり、助け合い、スポーツマンシップなど多くのことが凝縮された今回の一件は、多くの人の心を動かした。今後の高校野球史の中でも、語り継がれていくことだろう。【広島担当=古財稜明】