とっさの一言に人柄がにじみ出た。巨人で外国人の通訳を担当する全東日さん(44=ジョン・ドンイル)が、お立ち台でファンのハートをわしづかみした。

9月7日、東京ドームでのDeNA戦で“事件”は起きた。ともに本塁打を放ち、18得点の大勝に導いたウォーカーとポランコがヒーローインタビューでお立ち台に上がった。

まずはポランコが、2打席連発の感触などを話した。さらに、インタビュアーから「今日のウォーカーはどうでしたか?」と問われ、上機嫌のポランコは英語でたっぷりと応えた。直後にマイクを向けられたジョン通訳は「あ……、忘れた!」とまさかのど忘れ。ポランコがもう1度、話し直し、通訳も「毎日のようにウォーカーは練習してますので、近くで見て勉強になってます」と翻訳し、事なきを得た。

後日、ジョン通訳に当時の状況と心境を伺った。在籍11年目のベテラン通訳は「今までであんなことは初めてです。本当にど忘れしてしまった」と照れくさそうに話した。韓国出身で韓国語、日本語、英語の順で英語は第三言語として使っている。だが、言い訳はなく「忘れてしまったので正直に言った。なぜ、マイクで言ってしまったのかは自分でも分からない」とどこまでも誠実だった。

ただ、スタンドの反応は満点だった。勝利の余韻も味方してジョン通訳の「あ……、忘れた!」の仰天発言に大爆笑だけでなく大歓声も巻き起こった。【為田聡史】