延長13回表宇都宮工2死満塁、宇都宮工・宇賀神は2点適時打を放ちガッツポーズ(撮影・佐藤勝亮)
延長13回表宇都宮工2死満塁、宇都宮工・宇賀神は2点適時打を放ちガッツポーズ(撮影・佐藤勝亮)

「まだ終わってないですよ」。宇都宮工の宇賀神聖内野手(3年)がカメラ目線でそう訴えてきた気がした。

栃木大会準々決勝、宇都宮工-青藍泰斗戦。タイブレーク2イニング目の延長14回、3時間40分にも及んだ末、宇都宮工は死闘に敗れた。

先発した小林陽心投手(3年)が初回に4点を失った。「初回の4失点が大きすぎた。守りから入って攻撃のリズムをつくりたかったのに…」。小林は走塁ミスを含め自身の責任だと涙ながらに後悔を口にした。

それでも小林は魂を見せた。2回以降は12回までスコアに「0」を並べる投球を披露。「もっとこれが最初からできていれば」。そう思っていたに違いない。

7回まで青藍泰斗が3点リード。「このままゲームは終わりか…」そう思ってカメラを構えていたら、8回の先頭打者・宇賀神が「見てて下さい」とでも言いたかったかのように笑った。直後に四球で出塁し、反撃ののろしを上げた。4番・伊藤雄大外野手(3年)の2ラン本塁打が飛び出し、1点差。9回にも1点を返し、ゲームを振り出しに戻して見せた。

迎えた13回。宇賀神の2点適時打で3点を奪った。しかし、その裏に3点を返され同点。14回で力尽き、サヨナラ負けを喫した。

宇賀神は「初回のうまくいかない部分があったが、チームが1つになって、みんなが頑張ってくれた」と仲間への感謝を口にした。「春は先に点差が広がったら、追いつくことはできなかった」と成長面も語ったが「でも勝ちきれなかった。自分が足を引っ張った」と何度も悔やんだ。

激闘後に、大森一之監督(52)は「悔しさしかない」。言葉が出なかった。「走塁含め、仕掛けた部分が全部裏目に出てしまった」。最後は「選手に任せた」。選手を信じ、サインを出さなかった。後半の驚異的な追い上げには「精神的なタフさがでた。諦めずに追いついたのは、練習のたまものがでたのかな」と評価した。タイブレーク制度には「練習試合でもあまり経験しないので難しかった」と経験のない戦い方に苦戦した。

宇賀神は大好きな野球を「続けるかわからない」と明かした。「1年夏からベンチ入り、秋から試合に出て良い経験をさせてもらった。いろんな代の人とプレーをして、その代ごとにカラーがあった。出会えた仲間に感謝します」と3年間を振り返るとこらえ切れなかった涙があふれでた。この悔しい思いは忘れない。「最後まで野球は何があるかわからない。最後のアウト1つまであきらめないで欲しい。そしていつか甲子園に行って欲しいです」。

最後まで諦める事なくボールを追い続けたキャプテンは「悔いが残ってしまった」。しかし、諦めない姿に多くの感動を巻き起こした事も事実だ。「もしかしたら…」と誰もが思っただろう。高校野球の舞台からは退くが「どんな状況でも粘り強くやれば何かが起きる。宇工野球部で学んだ事を、これからの人生に1つ1つ生かしていきたいです」。3時間40分を戦い抜いた両ナインに、観客から盛大に拍手が送られた。【佐藤勝亮】

9回表宇都宮工、同点のホームを踏んだ宇都宮工・小林とハイタッチをする宇賀神(撮影・佐藤勝亮)
9回表宇都宮工、同点のホームを踏んだ宇都宮工・小林とハイタッチをする宇賀神(撮影・佐藤勝亮)