知的障がいのある生徒たちにも、甲子園の目標を-。都立中野特別支援学校の久保田浩司先生(55)が「甲子園 夢プロジェクト」を立ち上げた。6日、都内で会見を行い、指導に携わる元ロッテの荻野忠寛氏(38)、社会人チームYBC柏の小笠原大騎選手兼任コーチ(29)も登壇した。

久保田先生は「野球をきちんとやってきた人が教えれば、みんな伸びる。野球人口の拡大にもつながる」と呼びかけた。硬式野球をやりたい全国の高校生を集め、今月末から練習を始める予定。練習場所は関東近郊になる見込みで、遠方の場合はオンラインでの指導も計画されている。

実際に指導にあたる荻野氏は「スポーツは得意な人、競技をする人だけのものではなく、やりたい人に開かれている。やりたい選手がいるのなら、それをサポートするのは当然のこと。僕自身もチャレンジだと思って、いろいろ勉強しながら、そういう生徒の力になりたいと思う」と話した。

昨年、YBC柏からハマナウイの補強選手として初めて都市対抗に出場した小笠原氏は「大学時代に特別支援学校で研修を受けた際、スポーツの時間に本気でやらないと負けそうな子もいた。運動ができる子はいるので、可能性があると感じている。そこに携われるのはうれしく思っています」と話した。

久保田先生は知的障がいの生徒指導一筋で、今年34年目を迎える。日体大野球部の出身。高校野球の監督として甲子園を目指そうと思っていたが、新卒で配属された先は特別支援学校。「鼻水をたらしていたり、臭いがきつかったり、あの頃は全く理解していなかった」と赤裸々に明かす。

3年目に野球クラブの指導を任されるが、ボールを拾いに行って「とってきた」とセミを手にする生徒もいた。しかしある時「キャッチボールを教えてほしい」と生徒に頼まれた。練習の末、いい球が投げられたときの笑顔にハッとした。「できたこと、達成したことへの喜びは、普通の子と変わらない」と気付いた。

その後はソフトボール部の指導を続け、17年かけて一般チームに勝利。その瞬間を「みんな号泣でした。私も号泣。保護者の方が誰よりも喜んだ。『この子たちも、やればできるんですね』と。知的障がいがあることで、いろんなことに挑戦させてもらえない子どもだったけど、一般のチームに勝てる。そのときに、この子たちは甲子園に挑戦できるなと思った」と振り返る。

ケガの危険が伴うことや、グラウンドの広さが必要など壁も多いが「きっかけがないと始まらない。このプロジェクトを、きっかけにしたいんです。野球を通じて、生徒に自信を持たせてあげたい。親御さんにも、夢を見させてあげたい」と意気込む。

夢見るのは、特別支援学校が当たり前のように出場する予選会。みんなが「野球やろうよ!」と言える未来を目指す。【保坂恭子】

▼「甲子園 夢プロジェクト」の連絡先 久保田浩司先生(090-4661-6022)