20年初のTG戦で面白い場面があった。6回、先頭で4番ボーアが打席に入ったときだ。巨人守備陣は三塁手が左翼の位置へ入り「外野4人制」に。残る3人の内野手は右寄りに守った。前日まで2試合を戦った日本ハムも見せた「ボーア・シフト」だ。

同じく先頭だった4回にも敷かれていたのだが6回は極端だった。するとここで登板した2番手・鍬原拓也に対し、ボーアはバントの構えを見せたのである。

思い出すのが宜野座キャンプ中だった先月15日だ。ボーアの「バント構想」を書いた。開幕前に打ちまくっても本番でさっぱりという光景はよく見る。だからオープン戦はほどよくね…という話をしたときだ。「もちろん分かっているよ。大事なのはシーズンだ」。そう言いながらボーアはセーフティー・バントの構えをしてみせたのだった。

そして、この日だ。シフトの裏をかくぜと言わんばかりの構え。面白い。そうなれば話を聞きたいのは敵将だ。巨人担当記者が試合後、取材するうしろでこっそり参加させてもらった。名将はボーア・シフトについてどう話したのか。

「まあ、1回やっとこうとね。現実、どういう風になるかはともかく。動いとかないとそのときあわててしまうケースもあるからね。左でプル(引っ張り)のパワーヒッターだし」

そこで「ボーアは笑わしてましたね。バントの構えで」と聞いてみる。名将は「笑わしたの? あれ? 笑わしたのか。まあ彼のバントは見たくないね」とニンマリしながら答えた。

原の言う通り、実際はどんなシフトを敷かれたしてもボーアがバントをすることはない。そんな長距離砲なら逆に心配だ。それでも勝てば優勝が決まる、単打でもサヨナラ勝ちが決まるという場面で、なおも相手がシフトをしていたら。そんなとき、このスペシャル・プレーが出れば…。妄想してしまった。

「バントかい? ストライクならやっていたよ。相手があんなシフトをしいてくれて三塁のところが空いていて安打のチャンスをくれる。チームにとって走者が出ることが、一番、大事だからね」

虎番記者たちに聞かれたボーアは謙虚にそう話した。どこまで本気かは分からないが考え方は悪くない。でもこちらとしてはやっぱり本塁打を見たい。もちろんシーズンでの話だけど。(敬称略)

阪神対巨人 6回裏阪神無死、ボーアのとき巨人は三塁手が左翼へ周り、内野手は一塁側に3人が寄る変則シフトを敷く(撮影・加藤哉)
阪神対巨人 6回裏阪神無死、ボーアのとき巨人は三塁手が左翼へ周り、内野手は一塁側に3人が寄る変則シフトを敷く(撮影・加藤哉)