「西勇輝を安心させるな」という話だ。指揮官・矢野燿大がエースと認める西勇はこの日、ファームで登板。虎党にとって、まずは安心材料だ。それはいいのだが同時に阪神の先発スタッフには競争意識というか「隙あらば入れ替わる」という気配がもっとあってもいいのでは、と感じる。

開幕前に投手コーチ・金村暁が「先発投手がそろっていても次を育てることは重要です」と話していた。よそに比べても阪神はそろっている方なのに…と思ったがプロは常にそういう視点でいると気付かされた。

その意味で、現状、阪神は悪くない。この日の及川雅貴を見て、その思いを強くした。登板内容は虎番記者の記事を見てもらうとしてマウンドでの姿がいい。中継ぎで今季15試合投げているが先発姿がこんなに似合うのかと再認識した。

高卒2年目、阪神では当然らしいが髪を染めておらず、名門・横浜高から来た野球エリートのムードが漂う。できれば今後も茶髪にしたり妙なパーマをかけたりせずにいればエエのに…とおっさん的には思ったりするが、しっかり投げてくれればそれでいい。

「チームが変わる要素として打者、打線が成長するときと投手陣がそろってくるときのそれぞれがあるのですが、2つ同時に、ということはあまりないんですよね」

これは広島3連覇監督の緒方孝市(日刊スポーツ評論家)が言っていた話だ。それでいけば今季の阪神は打者が伸びる時期だろうか。怪物・佐藤輝明の加入で様子が変わった。中野拓夢もいい。ルーキー2人が打線に変化を与えたのは驚くべきことだ。

比較して投手陣を見ればルーキー伊藤将司は頑張っているが西勇、青柳晃洋、秋山拓巳らはおなじみの顔ぶれ。もちろん、それは阪神の強みであり「投高打低」のチームを支えてきた。

それでも次の備えは必要だろう。首脳陣はこのエキシビションマッチで及川、藤浪晋太郎らから「第6」の男を探っている。だが一気に2、3人が入れ替わるような事態すら起こるかもしれない。そこで投手のレベルを落とすことなく戦えるかどうか、だ。

あえて「西勇」と書いたが誰であっても同じことだ。いい結果が出なければ次の機会があるかどうか安心できない、代わりはいる…という状況をつくることは常勝軍団への道だ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)