第100回全国高等学校野球選手権記念南・北福岡大会は、22日に組み合わせが決まった。記念大会ということもあり、今年は初めて福岡大会を南北に分け「2校」が甲子園に出場できる。

 「ミレニアム世代」と呼ばれる2000年生まれ(早生まれは01年)の高校3年生が中心となる今大会は、すでに各地で発表されているとおり、各都道府県の高野連が「特別な年」として大会運営を企画し、盛り上げようと尽力している。

 福岡は7月7日の南北合同開会式を福岡ソフトバンクホークスの本拠地、ヤフオク!ドームで開催することを発表した。「福岡球児たちの“憧れの地”を踏ませてあげたい。入場行進をさせたい」との県高野連の思いが実り、6年ぶりの実現となった。そのほか、今年は今までにない特別な企画が多数用意されている。

 南・北福岡大会のキーワード。それは「つなぐ」だ。

「福岡にとっても特別な記念大会」と熱く語る福岡高野連の(左から)江浜義博副理事長と、野口敦弘理事長
「福岡にとっても特別な記念大会」と熱く語る福岡高野連の(左から)江浜義博副理事長と、野口敦弘理事長

■史上初?4人で行う、選手宣誓と、始球式

 1つ目の「つなぐ」は、選手宣誓だ。

 今年はなんと「4人」の主将によってリレー方式で選手宣誓を行う。県高野連の区分、福岡地区、筑後地区、福岡中央地区、北九州地区の各校主将から立候補を募り、抽選で4名が選ばれた。これには、野口敦弘理事長のある思いが込められていた。

 「福岡で初めて2校が出場できる記念すべき大会なので、2名の主将に宣誓をしてもらおうという話が最初に上がった。そこに、昨夏の九州北部豪雨で被害を受けた筑後地区の学校を勇気づけたいという声が挙がり、3名にしよう。いや、それなら各地区からの4名はどうだろうか、と。話が展開してまとまったというわけです」。

 考えてみると、確かに選手宣誓を1人で行わなければいけないというルールはない。実現すれば、地方大会では全国初の試みではないだろか。当日は言葉をつなぎながら4人で一つの宣誓を作り上げていくという。筑後地区・三池高の浦田幹仁主将は「野球ができることのありがたさを伝えたい」と話し、自分が見てきた、感じてきた被災地の思いを宣誓に込める。

 2つ目の「つなぐ」は、始球式だ。

福岡勢はこれまで4度の夏全国制覇を成し遂げているが、その偉業を果たした当時の「ヒーロー」に始球式をお願いすることになった。一人目は1947年に九州勢初の優勝を果たし、48年全国2連覇へと繋げた小倉・宮崎康之氏(元主将)。二人目は65年、故・原貢監督とともに炭鉱の町に希望を灯した三池工・穴見寛氏(元捕手)。三人目は92年、甲子園5試合4完封、失点1で初優勝した西日本短大付・森尾和貴氏(元エース)だ。3者とも福岡高校野球を語る上で欠かせない人物であり、大フィーバーの中心にいた名選手。3人がキャッチボールで1つのボールをつなぎ、最後に筑後地区の中学野球選手(1名)がボールを受け取って投げるという、こちらも「4人のリレー式」で行う予定だ。「世代を超えた『つながり』の意味を込めた。未来へ永く高校野球が続くようにと」(野口理事長)。ファンにとっては、レジェンドたちの姿に、当時の自分を重ね合わせる時間となりそうだ。

被災地熊本の球児に向け、「記念旗」にメッセージを書き入れる小倉の徳永直樹主将
被災地熊本の球児に向け、「記念旗」にメッセージを書き入れる小倉の徳永直樹主将

 3つ目の「つなぐ」は、友情の寄せ書き旗だ。

 この日、抽選会場入り口には、ある「記念旗」が用意されていた。来場した主将が次々にペンを取り、寄せ書きをしていったその旗は、一昨年、大地震に見舞われた熊本の高校球児に贈るための旗だった。「熊本頑張れ。直方高校」、「共に戦おう!鞍手高校」、「野球で笑顔に!東筑高校」。そこには、同じ白球を追う九州の仲間へのメッセージが記されていた。昨年、九州の全高野連から声が挙がり、福岡も参加している。「野球で恩返し」と書いた小倉・徳永直樹主将は「いろいろな方のお陰で野球ができている。その思いを背負って戦います」と、22回目の甲子園出場に意欲を燃やした。

 今夏で100回を迎える選手権大会は、戦争による中断や、震災、水害など、様々な困難を乗り越えて開催されてきた。何かのめぐり合わせで記念の年に集まった選手たちが「野球ができる喜び」そして「次へつなげる思い」をプレーに込め、自分らしく夏を戦う。【樫本ゆき】