待ってろシズコウ! ノーシードの静岡商が浜松市立を延長10回の末に退け、準優勝した12年以来となる4強に勝ち上がった。8回表に逆転も9回裏に同点に追いつかれ延長へ。10回表2死一、三塁から、代打の酒井一樹(3年)が決勝打を放った。準決勝では永年のライバル、静岡と相まみえることになった。

 静岡商の背番号14が大きなことをやってのけた。10回表、2死からチャンスをつくり酒井が右打席に入った。2球目だった。「ディレードスチールのサインが出ていたみたいなんですが、よく分からなかったのでとにかく振りました」。見事に内角の変化球をとらえ、三塁走者の戸田翼(3年)を迎え入れた。

 酒井 スタンドの応援がすごくて自分は何をしたのか分からなかった。セイショウすごいな、と思った。

 1年冬に右肘を痛め2年春に手術を受けた。今大会まで、公式戦でメンバーに入ることもなかったというシンデレラボーイだ。酒井は「朝練もしっかり毎日やっていたし、背番号をもらえるかな、と思っていた」と振り返る。3回戦の富士宮西戦での代打が公式戦初出場。そのときは凡退だったが今回はチームを勝利に導いた。

 ヒーローは酒井だが、戸田の存在が大きかった。0-2の6回には左翼へ大きな犠飛を放ち、8回には同点打と一時勝ち越しとなるホームを踏んだ。3安打2打点2得点の活躍に戸田は「打てる気がしたしやるしかない、と思っていた」と笑顔。捕手としても森亮太投手(3年)を序盤は直球、中盤から変化球を中心にリードし、浜松市立打線を7安打に抑えた。

 準決勝は待ち望んだ一戦だ。戸田が「1年かけてシズコウを求めてきた」と話せば、奥村有貴主将(3年)も「やっと舞台が整った」と高ぶる気持ちを表した。酒井も「これで満足してはダメだし、毎日接骨院に送ってくれた親にも恩返ししないと」と続けた。ノーシードで勝ち上がった静岡商が、第1シードの静岡に挑む。【加納慎也】