知内高野球部長から警察官に転身した北海道警本部少年課の安藤功警部(52)。卒業したばかりの元高校球児を前にして“野球人”の血が騒いだ。札幌学生野球連盟が4月に初開催した新人マナーセミナーに、講師として招かれた。未成年部員の飲酒、喫煙など、不祥事撲滅を目指す同連盟の取り組みに協力。警官としての経験談も踏まえ「安易な決断をして、後悔をしてほしくない」と訴えた。
高校では柔道、大学ではレスリング。野球はまったくの素人だった。92年4月に知内高に赴任すると、いきなり野球部部長を任され、その秋、同高は全道大会で決勝に進出。“ヒグマ打線”と恐れられた駒大岩見沢相手に4-6と接戦を演じ、準優勝した。「最初は野球に興味がなくて、なかなか感情移入できなかった。でも、強い相手に立ち向かう子どもたちに引き込まれ、気づけばベンチで大声を出していた」。野球の魅力にとりつかれた。
翌93年、第65回選抜高校野球に、甲子園初の町立高として出場。開会式直後の開幕試合で浜松商(静岡)と対戦した。序盤に失策などで失点し3-6と敗れたが、相手を上回る10安打を放つなど健闘した。「ベンチの僕の方がドキドキで。こんな大舞台で普通の子どもたちが堂々プレーしている姿に、涙が止まらなかった」と振り返った。
30歳の秋、転機が訪れた。「いろんな会議に出ているうちに、退学したり道を外した生徒をフォローしたいと思うようになって。でも教員ではできなかった。そのとき、生徒の進路資料の中に道警の募集要項があって。ちょうど年齢制限が30歳だったんです」。採用試験に受けた後、野球部の故山本鉄弥監督に相談した。「やってみたいんだべ。思い切ってやってみろ」。この言葉が後押しになり98年春、警官に転身した。
昨秋、主に少年犯罪を扱う道警本部少年課に配属された。野球に携わり、仲間と汗を流し、涙することの意義を知った。道を外れた若者とも、間近で接してきた。だからこそ伝えたいことがある。「仲間は一生の宝物。軽い気持ちで、してはいけないことに手を染めると、仲間を裏切り、一生重荷を背負うことになる。もし、道を外しそうな仲間がいたら引き戻してほしい」。春季全道高校野球は1日、準決勝が行われる。立場を変えた今でも、球児のフェアで熱いプレーを、気に掛けている。【永野高輔】

