センバツに続き、夏の甲子園も戦後初の中止が決定した。各所に及ぼす影響は計り知れない。「あゝ甲子園」と題し、人々の思いとともに紹介していく。

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今秋のドラフト候補で、高校NO・1遊撃手の声もある近江(滋賀)の土田龍空(りゅうく)内野手(3年)は、夏の全国高校野球選手権の中止が決定した20日の夜、自身のツイッターにその思いを記した。

最後の夏中止になりました。

とても悔しいです。

でも落ち込んでる暇なんてありません。さあ今です。皆んなで元気出して立ち上がりましょう!!(原文まま)

秋の気配が漂う青空と満員の甲子園球場の写真とともに、自宅から午後8時過ぎに発信した。あまりにも前向きな、そのツイートの真意を電話取材で本人に聞いた。土田は「あの日(20日)中止のニュースを知ったのは午後3時くらい。前から覚悟していたけど、ひとりで考えて落ち込んで」と、自宅でひっそりと現実を受け止めた。1年夏から2年連続で出場した甲子園。「自分を成長させてくれた場所。今年は日本一を狙いたかった」。1年夏は8強、金足農の吉田輝星(現日本ハム)からも二塁打を放った。昨年は初戦敗退ながら、これまで5試合すべてフル出場で全試合安打を放っている。

今年も出るはずの夢舞台がなくなった。チームメートたちと声を掛け合った後、あのツイートをした。「『皆んな』というのは、僕たちのことだけではなく、近江を応援してくれている方、野球が好きなファンの方も全部含めています。落ち込んでいても何も始まらないですから」と、言葉に込めた相手は野球を愛するすべての人だった。

3月に数日間、全体練習した以外はずっと自宅で自主練習。「堅実な(西武)源田選手と魅せる(ソフトバンク)今宮選手を合体させたような遊撃手になりたい」と、自宅の壁にボールを当て続け、確実性アップに励んだ。昨年より3キロ体重も増え76キロに。「筋力トレーニングで飛距離も出るようになった。あと3本打ちたい」。高校通算27本塁打。滋賀県独自の代替大会があれば、30本の大台にも挑戦する。「今の気持ちはプロ1本です」。新型コロナウイルスは3年生から多くの夢を奪った。だが、その先の未来へ向かって、たくましく前へ進んでいる。【石橋隆雄】(おわり)

◆土田龍空(つちだ・りゅうく)2002年(平14)12月30日生まれ、滋賀・米原市出身。米原小2年から米原野球スポーツ少年団で軟式野球をはじめる。米原中では硬式の湖北ボーイズでプレー。近江では1年夏から正遊撃手。18年夏、19年夏と2年連続甲子園出場。50メートルは6秒0。180センチ、76キロ。右投げ左打ち。