日本航空(山梨)のヴァデルナ・フェルガス投手(3年)に涙はなかった。試合が終わり整列の時にはベンチでつけていたマスクを外し、笑顔であいさつ。その後も感極まる様子もなく、淡々と荷物を片付けて甲子園のグラウンドを後にした。

4回の打者森田の2球目に、これまでの自己最速136キロを更新する137キロをマーク。まだまだ球威不足を実感しているが、この甲子園で大きく成長している。試合後は「やりきったかなと感じました。後悔はないので笑顔でした。真っすぐの球速が遅いので、もっと球速を上げていきたい。大学進学する予定です。その先はプロを目指して頑張りたいです」と、質問に丁寧に答えた。

東明館戦を完封、2回戦の新田戦は3失点完投勝利。智弁学園戦は5回まで2安打無失点と踏ん張ったが、6回に連打を浴び、内野の乱れもあり2点を奪われて逆転された。6回には智弁学園のスタンドからは智弁和歌山の応援で有名になった「ジョックロック」が鳴り響いていた。ヴァデルナは「ジョックロックに負けたくなかったんですが、2点取られてしまいました」と、この時はわずかにほほ笑みを浮かべた。

日本航空に進学した当初は心身ともにまだ弱く、ヴァデルナ自身も「野球は自分に合ってんのかな?」と不安に思ったこともあった。2年秋から3年春にかけてメンタル面でも、肉体面も大きく成長。「こうして背番号1をもらって甲子園で勝つことができて、やっぱり野球を選んで間違ってなかったと思います」。

日本航空の快進撃を支えた188センチ大型左腕は、さらに体を鍛えてまだまだ上のレベルでの野球に挑戦していくことになる。