<高校野球西東京大会:法政6-3多摩大聖ケ丘>◇13日◇2回戦◇多摩一本杉球場
高校野球のドラマは、勝った者にだけ生まれているわけではない。日刊スポーツでは今夏、随時連載「君がらんまん」で、勝者だけでなく敗者にもスポットを当てた物語をお届けする。
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多摩大聖ケ丘(西東京)の佐藤鴻己投手(3年)が、9回を145球で完投し、最後までマウンドを守った。中学1年からてんかん発作を抱えている。1日2回、1回9錠の薬を欠かさず服用。昨夏もエースナンバーを背負ったが、初戦の2日前に発作で倒れ、救援登板で1イニングを投げるだけで終わった。本来の力を出し切れず、悔しい思いをした。
今夏は発作はなかったものの、2週間前の練習で右手首を骨折。投球練習を再開できたのは前日の12日だった。それでも8安打6失点(自責5)で完投し、5点を追う9回1死満塁の最終打席では、右前2点適時二塁打を放った。3点差に迫り、塁上で跳び上がって喜びを爆発させた。
勝利には届かず、試合後は肩を落としてグラウンドを後にした。「負けてしまったので(昨夏の)悔しさは晴らせなかった。でも、自分の全力は出せたんじゃないかな」。最後の夏、自分の身体と向き合い続けた日々の集大成をみせた。【玉利朱音】

