日刊スポーツ客員評論家の渡辺久信氏(60)がセンバツに出場した注目選手、山梨学院大・菰田をチェック。おなじみ「ナベQ論」で分析します。
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驚かされたのは初回だよね。相手投手のカーブを完璧に捉えて、左翼席へたたき込んだ。初見の投手の、しかも変化球を初球から本塁打にするというのは、並大抵の技術じゃない。菰田本人も「カーブを狙っていた」と話していたが、事前に研究して的を絞っていたんでしょう。194センチの長身で長い手足を持ちながら、スイングは柔らかい。この身体の使い方のうまさは、打者としての天性のセンスを感じさせるね。
走塁面でも驚いたよ。5回に左前打で出塁した後、一塁から二塁への走塁タイムが3・7秒だった。右打者としては非常に速い部類に入る。あの体格でこれだけ動ける選手は、プロのスカウトの目にもより魅力的に映ったと思うよ。
ただ、心配なのは5回の守備で負傷した「左手」の状態だよね。試合後にギプスをしていたのを見ると、単なる打撲では済まない可能性もある。右投手にとって、左手は単にグラブをはめる手じゃないからね。投球動作をリードして、コントロールもバランスもすべてにおいて重要な役割を担っている。もし左手に痛みや違和感があれば、グラブを強く引き込むことができず、上半身と下半身の連動がバラバラになってしまう。コントロールやスピン量の多い直球も影を潜めてしまうだろう。これまで左手をケガした選手をたくさん見てきたが、治るまで意外と時間がかかるんだよ。今は無理をせず、慎重に経過を見てほしいと思う。
プロの世界では、一般的に「投手か野手か」の選択を迫られることが多い。だけどこの打撃センスと身体能力を見せつけられると、大谷翔平が切りひらいた「二刀流」という道が、彼にもあってもいいのではないかと思わされるよね。先例があるからこそ、我々の想像力も広がる。菰田にはそれだけの夢を抱かせるスケール感がある。

