<センバツ高校野球:高知2-0仙台育英>◇1日◇準々決勝

 優勝候補の仙台育英(宮城)が四国王者の高知に敗れ、8強で姿を消した。自慢の強力打線が、5安打と沈黙。好機はつくったが、高知の酒井祐弥(2年)、坂本優太(3年)の両右腕を崩しきれなかった。一方で課題だった投手陣が好投するなど、収穫もあった。夏の「大旗白河越え」に向け、仕切り直す。

 仙台育英の春の挑戦は、まさかの完封負けで幕を閉じた。佐々木順一朗監督(53)は「完璧に負けた。手の届くところにあるけど、1点も入らない。遠さも感じた」と悔しさをにじませた。昨秋の新チーム始動から公式戦18戦目。無敗で駆け抜けてきた選手たちは、校歌を歌う高知ナインをぼうぜんと見つめるしかなかった。

 自慢の強力打線が沈黙した。昨秋の明治神宮大会優勝の原動力となった集中打が1度もなかった。先発の高知・酒井からはわずか2安打。いずれも、完全に詰まらせられたものだった。直球を狙っているのに、捉えきれない。3番長谷川寛外野手(3年)が芯でとらえた打球が遊撃の正面を突くなど、ツキにも見放された。「俺たちの大好きな後半戦だ」とベンチは最後までなえなかったが、7回から登板した坂本優のフォークにも手を焼いた。最後まで、本塁が遠かった。

 選手を信じ、攻める姿勢は崩さなかった。9回無死一、二塁。6番小林遼捕手(3年)は打って出た。2点差。犠打で1死二、三塁とする策も考えられるが「バントは全く考えなかった。一番信頼している打者ですから」と佐々木監督。右飛で1死一、三塁となり、7番阿部涼平内野手(2年)が遊ゴロ併殺に終わったが「バットとボール、1センチの差(で併殺打になった)。でもそこが大きな差」と結果を受け入れた。

 秘策も用意していた。9回の攻撃中、公式戦登板ゼロの“秘密兵器”梅津晃大投手(2年)に、ブルペンでの投球練習を指示。同点延長も視野に入れ、9番馬場皐輔投手(3年)への代打も想定。これまで、ベンチ前のキャッチボールもしていなかった186センチの長身右腕への指令は「まだいける。諦めるな」というメッセージだった。「ノックから変なプレーが出て地に足がついていなかった」(上林)選手たちも、最後まで食らい付いた。

 打線は想定外の結果に終わったが、課題だった投手陣は奮闘した。先発の鈴木天斗(3年)は5回2失点で踏みとどまり、馬場は4回を1安打無失点と完璧な内容だった。上林は「負ける気がしなかったけど、『何か』が足りなかった。その何かを探して、夏に帰ってきたい」と締めた。真夏の王者となるための戦いは、すでに始まっている。【今井恵太】