通天閣に打ち取った!? 阪神藤浪晋太郎投手(21)が「マツダオールスターゲーム2015」第1戦に登板。大阪桐蔭の後輩、西武森友哉捕手(19)と仰天対決で沸かせた。153キロ速球を打ち返された打球は東京ドームの天井を直撃して一飛。大阪桐蔭出身4人を含め、3回打者9人をパーフェクトに抑えた。3年連続の球宴で堂々の主役を張り勝ち投手となり、MVPを獲得した。

 もう、笑うしかない。藤浪は目尻を下げ、白い歯をこぼし、天井を指さした。3イニング目の6回だ。先頭の3番森に2球連続で直球勝負。内角153キロを投じた。120%のフルスイングに対し、スピンの利いた直球が伸びる。白球は焦げるようにこすられ、加速しながら真上に舞い上がった。そのまま約55メートル、東京ドームの天井にタッチ。落下地点が変わり、一塁ロペスは慌てて体全体を伸ばしてキャッチした。

 藤浪 さすがに東京ドームで天井に当てられたことはない。抑えられてホッとしたというより、ビックリした方が大きい。さすが、いいスイングです。しっかり振れているから、あそこまで打球が上がるんでしょうね。

 全セ2番手として4回表から登板し、予定の2イニングを打者6人でピシャリ。大阪桐蔭の1学年下、森との対戦まであと1人だったのに…。残念がった野球ファンは早とちりだ。5回裏、原監督から「せっかくだから、もう1回行ったらどうだ?」と打診されて快諾。夢の対決が実現した。

 漫画ドカベンの坂田三吉「通天閣打法」をほうふつとさせる、まさかの「天井打」。球界を代表するパワーとパワーのぶつかり合いで衝撃シーンを演出すると、4番中村を151キロで遊飛、5番中田を151キロで左飛に仕留めた。4回に一ゴロの6番浅村を含め、対戦を熱望していた大阪桐蔭の先輩3人と後輩1人を完璧に封じた。「なんとか紙一重です」と破顔した。

 森 真っすぐで勝負して~や。

 藤浪 それは分からんで。

 森 それはないわ~。

 全セの練習終盤、レフトでフリー打撃の打球を追っていた藤浪のもとに、“森さん”が歩み寄ってきた。約10分間、2人だけの空間で後輩から「おねだり」されていた。「球場として真っすぐを投げないといけない雰囲気があったので」。先輩は優しく願いを受け入れ、貫禄を見せつけた。

 藤浪 “森さん”に打たれると、後で何を言われるか分からないので(笑い)

 大阪桐蔭時代に甲子園春夏連覇を成し遂げた伝説のバッテリー。お互いタメ口を使い合える仲だ。中学時代はボーイズリーグのライバルとして、高校時代は紅白戦、シート打撃で「打たれた記憶しかない」と苦笑いする。それでもプロ入り後は今年3月のオープン戦で初対決し、157キロ3連発で左飛。再戦も完勝し、3回完全投球で球宴初勝利&MVPまでゲットした。

 藤浪 ファンの皆さんに楽しんでもらえて良かったです!

 最速156キロに白熱の対決でファンを魅了。2人の伝説に、また忘れられない1ページが加わった。【佐井陽介】

 ▼藤浪が3回を完全に抑えてMVP。3回完全は12年第3戦赤川(ヤクルト)以来16人目で、阪神では70年第3戦上田二、71年第1戦江夏に次いで3人目。藤浪の21歳3カ月は68年第1戦森安(東映)の20歳7カ月に次ぐ年少記録だ。また、MVPの最年少記録には86年第2戦清原(西武)の18歳11カ月があるが、セ・リーグでは95年第2戦松井(巨人)の21歳1カ月に次ぐ2番目の年少MVP。過去に21歳以下のMVPは6人(7度)いるものの、全員が野手。投手では70年第2戦江夏(阪神)の22歳2カ月を抜く最年少MVPとなった。