阪神梅野隆太郎捕手(27)に、山賊打線に学んだ「初球攻撃」について聞く。交流戦期間で対戦した際に獅子打線の超積極的な攻撃を目の当たりにし、それを自ら体現している。今季は、初球を打てば20打数7安打、打率3割5分のデータがあるように、「前のめりな姿勢」が好結果につながっている。

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 今季はここまで56試合で先発マスクをかぶっている。「正捕手」という立場に近づきつつあるが、本人に慢心は一切ない。

 梅野 ずっと出させてもらってきた中で、エース級(メッセンジャー)の先発日に1度スタメンを外れました。その代償というか、自分の中ではすごく大きくて…。シーズンの最初は、ずっと守り勝てていた。数多く(マスクを)かぶらせてもらっていますし、(ベンチスタート時も)勝ちパターンの試合終盤には出ると思ってやっています。使われ方も含めて信頼感は以前より強くなってきたのかなと思います。

 正捕手奪取へ、課題については自覚がある。

 梅野 正直に言うと、打撃の部分もあるんじゃないですかね。自分たちが打たれて、打って返せないのであれば、攻撃重視になると思うので。

 66試合出場で打率2割2分6厘、4本塁打。もがき苦しんだ末、光が見え始めているという。

 梅野 1年目は長打が出ていた。そこが原点で、逆算して見てみようと。そこには明らかに打ちにいけている自分がいる。ファウルも、振った中で確認できていた。打撃が落ちてきていた3、4年目はボールを受けすぎて、呼び込みすぎていました。逆方向に打つという部分では、うまくいったこともある。だけど、何か違うなとムズムズ思うときがあった。そんなとき(昨季)秋季キャンプで、これだと思うことがあって。4スタンス理論(※)を今も参考にすることがあるんですが、自分は前さばき。右足を固定して回るんじゃなくて(体重を)ボールにぶつけるイメージです。

 6月以降は打撃成績が大きく向上。手応えをつかみつつある。

 梅野 ちょうど1カ月ぐらい前、中村紀洋さん(前DeNA)のYouTubeを見たんです。平野打撃コーチがティー打撃をしていたとき、「お前はノリさんみたいになってほしいんだよな。イメージ的には」と話してくれて。1年目とかの自分を見返していたときも「それと照らし合わせてYouTubeも見てみたらどうだ」と話していただいて。見てみると、ボールに当たってからを強くするには、受けていちゃダメだな、と。ボール自体にぶつけにいく。ボールを引きつけて、待って軸で回転しようとしても、自分には合わないなと思った。(前に)出て対応していくスタイルの方が変化球にも対応できる。今は8番を打っているので、当てにいっても魅力がない。そこに気付いたのが早いのか遅いのか分からないですけど(笑い)。打ちにいくスタイルにガラッと変えました。

 今季は初球から勝負に出る場面が多く、初球打ちの結果は打率3割5分を誇る。

 梅野 今までは出塁することをずっと考えてきた。ここはセーフティーの構えで1球見ようとか、8番打者にはそういう役割がある。だから初球を打つスタイルではありませんでした。初球を見てから「行こう」だった。それを1球目にスイングしてファウルになろうが空振りになろうが、スイングすることで対応できるようにはなりました。相手もいきなり振られるのが嫌だと思う。捕手として見ていても、初球をバーンっていかれるのは嫌なので。

 交流戦で「山賊打線」と対決した時に感じたことがベースにある。

 梅野 西武と戦ったとき、糸井さんが満塁弾を打った次の回、ファーストストライクを振ってきて「うわっ」と思った。普通だったら塁に出ようとなる。セ・リーグの打者だったら、ほぼ見てくる。振られるのは嫌だったし、勢いも感じた。だから、打ちにいけるというスタイルは大事。振っていった方が自分の結果に結びついてると思います。

 前のめりな姿勢を取り戻した梅野が、再び進化を始めた。

 ※◆4スタンス理論 身体的構造を4タイプに分けて、体の動かし方を分析する理論。人によって重心が異なり、つま先内側(A1)、つま先外側(A2)、かかと内側(B1)、かかと外側(B2)の4タイプに分類。それぞれに合った体の使い方、形で、自然で効果的な動きを目指すというもの。前屈や寝返り、膝立ちして他人の腕を引くなど簡単な動きでタイプ診断を行う。スポーツアドバイザーの広戸聡一氏が提唱している。