巨人がマツダスタジアムで、また勝てなかった。ただ、負けなかったことも事実だ。敵地13連敗中で、もぎ取った“一筋の引き分け”。9回2死、あと1球で敗戦の危機を同点ソロ弾で救った陽岱鋼が報道陣に囲まれると、亀井が「謙虚にな!」と笑顔でジョークも飛んだ。今季最長の4時間44分を戦い抜いた高橋監督は「みんなでよく粘って守った」と総力戦を振り返った。

 執念の采配を振った。延長10回無死一塁。臨時守護神アダメスの代打に先発の一角でベンチ入りしていた吉川光を送った。巨人が投手を代打で起用するのは02年の桑田以来だった。長野がコンディション不良でベンチ入りせず、その時点で残っていた野手は中井だけ。今季、犠打企画で6度中5度を決め、成功率8割3分3厘と菅野の8割4分6厘に匹敵するのが吉川光。ミッションを託された。

 投前に見事に転がした。「二岡さん(打撃コーチ)にあるかもと言われていた。成功してよかった」。決勝点には結びつかなかったが、流れは失わなかった。11回1死一塁の守備で左前打に対し、一塁走者鈴木に三塁を狙われたが、途中から左翼に入った岡本が正確な送球で刺した。

 野手は全員起用し残った投手は田原と中川だけだった。高橋監督は「(吉川光は)人数の問題もあるし、ベンチに入っている選手でバントが割とうまい」と局面を説明した。「負けなかったのは大きいとは思うが、もう一押し」と決着をつけられなかったことを強調した。このドローを鬼門突破の風穴とする。【広重竜太郎】

 ◆代打桑田 原監督1年目の02年6月19日の横浜(現DeNA)戦(横浜スタジアム)の延長11回無死一塁、投手岡島の打順で代打桑田が打席に立った。ベンチに野手は鈴木、村田、清原がいた。桑田は横浜東の初球をバントの構えからヒッティング。左前打で好機を広げ、その後に2点を奪って勝利した。