2018年は、星野さんがいなくなってから初めてのシーズンだった。あの人が死ぬなんて…一周忌を迎えても、何かの作り話な気がしてしょうがない。西武担当として国内を飛び回ったが「ここ、監督と来たなぁ」と思い出される場所がいくつもあった。

3月30日、札幌で迎えた日本ハムとの開幕戦の朝。あえて、楽天の定宿であるホテルに泊まった。担当記者とお茶会をしていたテラスに立つ。まだ寒い。それでも、隣のビルに描かれた壁画の男性は相変わらず、豪快にビールを飲んでいる。監督は見るたび「おっさん、寒くないんか」と笑っていた。

7月14日、熊本でのオールスター第2戦。熊本駅に降り立った。九州学院のグラウンドを借りた練習日。明大の先輩で、大洋でプレーした松岡功祐さんの母校で「あの人の引退前に対戦して、ヒットを打たれた。『星野、ありがとう!ありがとう!』て叫びながら走っていった。先輩、そりゃないよ」と苦笑いしていた。

メットライフドーム。ネット裏の階段を上り下りする。「負けると、これがつらい」とボヤいていたっけ。腰痛がひどくなってからは、こっそり観客用のエレベーターを使っていた。

熊本駅では、タクシー待ちの列で楽天の安部井本部長と会った。「昔、熊本で試合しましたよね。星野監督のこと、思い出しちゃって。今年は、そんな場所がいっぱいあります」と声をかけた。「僕もそうです。このビルの前に立って、電話で星野さんに怒られたな、とか思い出します」と返ってきた。笑っているような、泣いているような、優しい顔だった。

存在しなくなって、一層存在を感じる。圧倒的な存在感は、喪失感の裏返しだろう。似た感情を抱いたままの人は数え切れないと思う。【11~14年楽天担当=古川真弥】