令和のスター候補、高卒2年目の広島山口翔投手(20)が中日8回戦(ナゴヤドーム)でプロデビューを果たした。

5点ビハインドの5回に登板し、ともにピンチを招きながら2イニングを無失点。自己最速にあと1キロに迫る149キロを計測するなど、度胸満点のマウンドさばきだった。再び借金生活となったチームに、新星が一筋の光を差した。

ピンチの連続でマウンドではややこわばった表情を見せたが、無失点で切り抜けると20歳の山口はようやく表情を緩めた。プロ初マウンドとなった5回は1死から安打と死球で一、二塁を招いた。それでも後続を断つと、6回はここまで3安打の平田を二ゴロ。2死から大島、ビシエドに連打を浴びて再び招いた一、三塁のピンチでは、思い切りのいい腕の振りでこの日最速の149キロで5番阿部を見逃し三振に仕留めた。

「ホッとしました。やっと1歩踏み出せました。ファームと違う雰囲気だったし、景色も違う。体もフワフワしていて、いつも以上の力は出せなかった」

ドーム球場での登板は人生初だった。中日の看板選手たちと対峙(たいじ)しても、ピンチでも崩れはしなかった。1軍レベルを肌で感じた上々のデビューとなった。

「平田選手にも意識せずに自分の球を投げられた。腕をしっかり振って投げればゾーンで勝負できた。でも少し高めに浮いたらビシエドさんみたいに簡単に持っていかれる。いい経験になったと思う」

度胸は満点。昨オフのファン感謝デーでは満員のマツダスタジアムで大先輩の永川のものまねを披露。選手会ゴルフでも盛り上げ役を率先し、初の参加となった今春1軍キャンプの円陣でも先輩選手を笑わせた。チーム一のムードメーカー上本も「後継者」と認める芸達者ぶりと度胸の良さ。「一番若いので目立つことができるのであれば何でもやりますよ」。まだ幼さの残るベビーフェースでニコリと笑う。

2回無失点の新星に緒方監督は「かなり緊張していたと思うけど、魅力ある球を投げるのは見られた。チャンスがあれば、また投げさせたい」と合格点を与えた。12連戦も11試合目。チームには疲労感がにじみ、重い空気も感じられたが、20歳のフレッシュさが敗戦の中で一服の清涼剤となった。【前原淳】

 

◆山口翔(やまぐち・しょう)1999年(平11)4月28日生まれ、熊本市出身。父の転勤で小4から広島に移住。「高陽スカイバンズ」で野球を始める。小6から熊本へ戻り、日吉中をへて、熊本工へ進学。1年秋からベンチ入りし、2年春にはセンバツ出場。2年夏の県準々決勝の秀岳館戦ではサヨナラ死球を与えて敗戦。3年夏は3回戦で敗れた。好きな言葉は名前の由来となった「大きく羽ばたけ」。17年ドラフト2位で広島入団。今季は2軍で4試合に登板し、2勝1敗、防御率3・38。181センチ、75キロ。右投げ右打ち。