巨人のエースが、大胆なフォームチェンジでさらなる高みを目指す。菅野智之投手(30)が2日、サンマリン宮崎で行われている春季キャンプで初のブルペン入り。

ヤンキース田中に似た、下半身より先に腕から始動する新フォームで32球を投げ込んだ。

最速146キロを計測した直球に加え、カーブも勝負球に使えると好感触。すでに3年連続6度目の開幕投手に内定し、3月20日に照準を合わせて調整ピッチを上げていく。

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ブルペンに無数のシャッター音が響き渡った。菅野は左足を上げる前に、上半身のみを先に始動した。グラブで弧を描くように、ゆっくりと顔の右側に持っていき、遅れて左足を踏み込む。新フォームで32球。直球以外にカーブ、カットボール、スライダーも投げた。キャンプ2日目で早くも最速は146キロを計測した。「真っすぐもある程度コーナーに制球されていると思いますし、ボール自体も力強かった」と手応えを口にした。

オフに「鴻江スポーツアカデミー」でフォーム改造に取り組んだ。昨季は腰痛に苦しめられ11勝。変化を求めた。ソフトバンク千賀らが師事する同アカデミー代表の鴻江氏が提唱する「骨幹理論」では、人間の体は「うで体(猫背)」か「あし体(反り腰)」の2種類に分類される。菅野は「うで体」で同氏によれば「腕から動いて、足がついてくる」のが理想。体に合ったフォームへ改造した。

ブルペン投球で2つの効果を実感した。

<1>バランス 「体重移動もスムーズになったと思いますし、バランスが一番良くなったと感じている」。バランスが整えば、リリースポイントも安定する。制球の精度が高まった。

<2>カーブ 「スピン量も増えてると感じますし曲がり幅も大きくなったなと」。これまで見せ球的要素のあったカーブだが、勝負球での活用を視野に入れた。

実績に甘んじず、進化を求める。その姿勢に宮本投手チーフコーチはかつての背番号18の姿を重ねた。現役時代のチームメート、桑田真澄氏を例に挙げ「キャンプに入るといつもフォームを変えてきていた。菅野もまた新たな目標を見つけてきたかと」と気持ちの変化を感じとった。

3月20日の開幕へ、実戦登板は沖縄移動後のオープン戦からの予定だ。菅野は「意識付けでオーバーにやってますけど、実際にはもうちょっと落ち着いた感じになる」と微調整しながら新フォームを体に染みこませる。残り13勝の通算100勝、東京五輪での金メダル、巨人の日本一。メモリアルイヤーが本格的に幕を開けた。【久永壮真】

▽巨人原監督(菅野のブルペン投球を見守り)「リニューアルした感じはあるよね。気分良く調整してくれれば。リーダーですから」

◆鴻江スポーツアカデミー スポーツトレーナーで野球以外にも指導を行う鴻江寿治(こうのえ・ひさお)氏が主宰。投球動作の解析などを基に、独自の理論とともに投球フォームを作り上げる。巨人菅野は1月17、18日に宮国、ソフトバンク千賀、杉山、川原、ロッテ種市、阪神浜地、ソフトボール上野と同氏の下で自主トレに参加した。

<活躍後にフォームを変えた主な投手>

◆村田兆治(ロッテ)74年に12勝を挙げてチームの日本一に貢献。75年からフォークの癖を見破られないよう足を高く上げ、右手がふくらはぎの後ろに隠れるように地面まで下ろし、右腕を勢いよく振り下ろすフォームに改造。「マサカリ投法」と呼ばれ、自身の代名詞となった。

◆山本昌(中日)93、94年に連続で最多勝を獲得後、95年に左膝のケガをしてからフォーム改造に着手。リリース時の左肘の位置を変えたり、右足を高く上げた後に1拍の「間」をとったりするなど、毎年のように細かく調整し、50歳まで現役を続けた。

◆岩隈久志(現巨人)06年から2段モーションが禁止となり、それまでの右腕を下げてから振り上げた足を上下させるフォームから、足の運びをなめらかにするシンプルなフォームに変えた。他にも2段モーションだった三浦(横浜)などもフォームを変更。