来日2年目の日本ハム王柏融外野手(26)が22日、西武との練習試合(メットライフドーム)で、左中間席への1発を放った。先頭の6回、西武平井克典投手(28)の直球を完璧に捉えて、変革の兆しを見せた。2回の第1打席では憧れ続けた“平成の怪物”松坂大輔投手(39)の初球を右前へ運び出塁。台湾が誇る打撃の天才は、逆襲のシーズンへ向け、着々と準備を整えている。

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バットを握った両手は、振り切った後も最後まで離れなかった。日本ハム王が6回、今季対外試合初となるソロアーチを、左中間席中段へたたき込んだ。西武平井の3球目、外角の141キロ。お手本のような打撃に「しっかり捉えることができました。(バットを)振り切ることができたと思います」。ダイヤモンドを一周すると、笑顔でチームメートとハイタッチをかわした。

背番号を99から3へ変更し挑む来日2年目は“変革”の予感が漂う。「特に外の球を狙っていたわけではない。タイミングです」と涼やかに振り返ったが、完璧な一打に春季キャンプを通して二人三脚で打撃改革に取り組んできた小笠原ヘッド兼打撃コーチも「しっかりとボールに力を伝えられていた。良い傾向。(本領発揮の)兆しが出てきたね」と納得顔だ。

母国台湾ではシーズン打率4割を2度達成した「打撃の天才」も、来日1年目の昨季は環境の違いに戸惑った。故障も相次ぎ、88試合で打率2割5分5厘、35打点、3本塁打。納得できない結果に、次第に笑顔が消えていった。変化球でかわす日本人投手に対応しようと、小さくなっていたスイングを元に戻そうと必死に取り組んでいる。

幼い頃から、テレビ中継で日本の野球をよく見ていた。中でも「特に印象に残っています」というのが、この日対戦した松坂だ。2回の第1打席、待望の初対決では初球のスライダーを、いきなり右前打。台湾メディアが「『平成の怪物』と対決」と、インターネット速報で報じた注目の打席に「不思議な感じがしました。スター選手なので対戦できて良かったと思います」。開幕までの猶予期間に実現した念願の2打席は1安打1三振。現実となった夢を刺激に代えて「台湾の大王」は、異国での成功へ突き進む。【中島宙恵】

◆昨季の王柏融 3月29日オリックスとの開幕戦(札幌ドーム)で「5番・左翼」で先発、初出場を果たした。2戦目で初安打を放つなど順調なスタートを切ったが、4月末に左太もも裏の張り、7月には右肩関節骨挫傷など、シーズンを通してけがに泣かされ不本意な結果に終わった。最終成績は88試合出場(先発82、代打6試合)。306打数78安打、3本塁打35打点、打率は2割5分5厘。