<日本シリーズ:オリックス1-2ヤクルト>◇第6戦◇27日◇ほっともっと神戸

つまりオリックスはこれからのチームということなのだろう。ヤクルトとの頂上決戦は文字通り、1点を争う死闘が続いた。そんな中で目立ったのが守備のミスだった。この試合、延長12回の決勝点もバッテリーミスから失ったものだ。

それが若さであり、指揮官・中嶋聡が恐れずに若い選手を起用した1つの結果でもある。シリーズで敗退したとはいえ、長いシーズン、そしてクライマックスシリーズを勝ち抜いた実績は否定されるものではない。中嶋率いるオリックスはよく戦ったし、面白いシリーズだった。

「よく似てるんよね。本当に…」。シリーズ前、オリックスのヘッドコーチ・水本勝己が言った。今季から同職に就いた水本は異色の経歴で知られる。昨季まで広島ひと筋だが1軍経験はない。

そんな水本が“脚光”を浴びたのは2軍監督として広島の3連覇を支えたからだ。3連覇監督・緒方孝市(現日刊スポーツ評論家)とは同学年で親交が深い。なんでも話し、裏方として踏ん張った。その水本に自身もオリックスの2軍監督として接し、ともに戦おうと招いたのが中嶋だ。

「似ている」というのは中嶋と緒方、そして3連覇を果たした広島と現在のオリックスの姿である。武骨でぶっきらぼう、メディアの取材も好きではない。そんな共通項を持つ2人だが、チームを変えようという姿勢も同じだった。

「開幕戦の二遊間ですよ。あんなの誰ができますか? あれが監督の思い切りです」。若い太田椋、紅林弘太郎の2人をスタメンで起用したことが象徴だったと水本は言う。その2人は日本一を争うこのシリーズでも戦力になった。

脂の乗りきった吉田正尚、遅咲きの杉本裕太郎もいる。ベテランの域にきたT-岡田、すっかり中堅の安達了一も支えるだろう。若手、中堅、ベテランがひとつになり、盛り上げていける。日本一こそ逃したが、また来季がある。素直にそう思わせる6試合だった。

「今日の日を想定して、7月に通常より多くの肥料を与えることから準備は始まりました。美しい芝生をどうぞご堪能ください」

25年前も現在もオリックスで広報業務などに携わる花木聡は試合前にツイッターでつぶやいた。神戸のスタジアムはやはり美しかった。その芝生同様、チームもしっかり成長しつつある。(敬称略)【高原寿夫編集委員】