積み重ねたスイングが放物線への道のりだった。広島ドラフト3位の中村健人外野手(24=トヨタ自動車)が11日、22年初実戦となる紅白戦で左翼へ2ランを放った。これがチームの“初本塁打”。逆方向にも軽々とはじき返す右打ち即戦力ルーキーが結果を出した。3連休の初日で観衆は今キャンプ最多の1400人。ファンにも首脳陣にも存在感を示した。

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高い放物線を描いた白球が青空を切り裂いた。長い滞空時間ののち、左翼の芝生席に着弾。内野席を埋めた多くの観衆が「おぉ!」とルーキーのアーチに心をつかまれた。

この本塁打が生まれたのにはワケがある。中村健は高橋昂の半速球のカットボールに体が開きかけたが、こらえた。いや、こらえられるように鍛えていたのだ。

ティー打撃でスタンスと平行にバットを置く。その意図は「疲れてくると楽をしようと体が開いてしまう。それを矯正する意識付けにバットを置いている」。中京大中京、慶大、トヨタ自動車と豊富な経験を持つ背番号50が続けてきた、地道な練習。「入ってくるボールは外側にバットが入りやすい。その球に(体が)開いてしまったらファウルゾーンに飛んでしまう。ボールの内側(を打つ)という練習ができた結果」。細やかな工夫と強い意識が実を結んだ1発だった。

この一打に佐々岡真司監督(54)は「左(投手)のカットにうまく(体が)回った。右の長距離砲は今のチームに必要なところ。元気もよくて明るくて結果も出ている」と絶賛。中村健自身も「本塁打は魅力ある野球の醍醐味(だいごみ)。フェンスを越えて良かった」と満面の笑みを浮かべた。実戦を見据え、練習を続けるスラッガーは、連日猛アピールを続けている。【前山慎治】