西武水上由伸投手(23)がうれしいプロ初勝利を挙げた。育成ドラフト出身者では球団初となる白星でもあった。

【ニッカン式スコア】20日の西武-ロッテ戦詳細スコア

7回2死二、三塁。先発松本が浴びた初安打も絡み、迎えたピンチだった。出番は、試合の流れが一気に動きそうな状況で巡ってきた。恐れることはない。むしろ「ああいう場面の方が楽しめる」と心躍らせていた。ロッテ代打の山口への2球目。シュートで胸元を攻めた。「思い切り詰まらせてやろ」。まさに狙い通り、投ゴロに仕留めた。仕事を果たした。

その裏に味方が決勝点となる1点を挙げ、勝ち投手となった。

「2球だけだったので。(松本)航さん、すいません。(白星)いただきました」。

初勝利の気持ちを聞かれ、そう笑いを誘ったが、初勝利までの過程ではずっと中継ぎを支えてきた。今季は21試合中、この日は11試合目の登板。勝っている時も、負けている状態でも、緊迫する接戦のマウンドでも「便利屋」と投げてきた。結果的に初勝利は「2球」で転がってきたが、決してラッキーではない。この試合最大のピンチをしのいだ価値の重い2球。そして信頼の積み重ねの産物でもあった。

四国学院大から20年育成ドラフト5位で入団した2年目右腕。昨季はデビューから17試合連続無失点のリーグ新記録を樹立した。強みはピンチを心の底から楽しめる“超ポジティブ思考”。原点の1つは帝京三高時代にやっていたメンタルトレーニングにある。何事もプラスに受け止めるようになった。

当時は主に打者。たとえば「スライダーで三振した時」は、「俺にびびって変化球で逃げたな」と頭の中で変換する。メンタルトレーニング以前の「打てずにへこんでいた」自分が変わった。「最悪な場面も楽しむ」「すべてプラスに考える」。その習慣の積み重ねが、今につながる。ポジティブすぎて、周囲から心配されることもあるそう。ただ、それはリリーフ向きな超強心臓ともいえる。

投手陣は前日19日に続き、1安打完封リレー。2試合連続で被安打1以下に抑えたチームは、95年日本ハム以来、27年ぶり7度目。2試合とも継投での1安打リレーはプロ野球史上初めての出来事だった。まさに歴史的な快挙の大きな立役者となった。水上は「いつも野手の方にいいリズムで渡せるように考えている。少しでもチームの力になれるように頑張りたい」。これからも窮地を楽しみ、チームを救う。獅子のブルペンを支えていく。【上田悠太】