<阪神7-1日本ハム>◇26日◇甲子園

 阪神藤浪晋太郎投手(19)が待ち望んだ瞬間が2回に訪れた。無死二塁で、「5番大谷」のコール。いよいよ対峙(たいじ)する時がきた。初球は150キロの直球。149キロ、152キロ、152キロと立て続けの直球勝負だ。5球目に選んだのは得意の134キロのカットボール。力ない飛球は左翼マートンのグラブに収まった。4、6回には二塁打を許した。打たれた直後は悔しさをかみ殺すような表情を見せたが、試合後はすがすがしかった。

 藤浪

 (大谷に)打たれはしましたけど、点につながらなかったので、よかった。やっぱり雰囲気がありますし、オーラやスイングはプロの選手でした。いい雰囲気の中で投げさせてもらった。

 試合前、17歳上の捕手・藤井彰から「(大谷と)楽しんで勝負すればいい」と言われた。返事は「(個人的な勝負は)関係ないです」だった。事前にそんなやり取りがあって、実際に投げた12球のうち11球が真っすぐ。「配球は藤井さんに任せていた。(大谷は)直球を狙っているなとは思った」と振り返った。大谷との対決が注目されたが、背中などの張りが癒えて3週間ぶりの復帰登板だった。得点圏に再三走者を背負いながら粘り強く投げ、高校時代から続く甲子園での連勝を12に伸ばした。晴れやかな表情だったのもうなずける。

 ライバルの存在が藤浪を強くしてきた。中学では1年上の飯塚孝史投手(大阪ガス)を超えられなかった。履正社で11年センバツ4強入りした右腕は抜群の制球で打ち取るスタイル。制球の大切さが身に染みた。高校1年時には大谷の存在を伝え聞き、「自分と同じくらいの身長のピッチャーがいる」と驚いた。3年のセンバツでの初対決で本塁打を打たれ、周囲からは「ライバル」と見られるようになった。

 大谷と球界を背負うことが期待されると聞かれると、小さく笑みを浮かべた。「まだそういうレベルではない。ライバル関係にされてしまうが、あまり気にせず互いに高め合っていければ。ファンの方も楽しみにして下さってると思うので、プロ野球を盛り上げられるようにしたいです」。

 いつかは大谷と「投手同士として投げ合いたい」と話している藤浪。これから名勝負に育っていくであろう対決は、まだ始まったばかりだ。【山本大地】