ユーチューバーとリングで戦ったプロ選手たちが謝罪に追い込まれている。
ボクシング元WBO世界フライ級王者の木村翔(33=花形)は昨年12月28日、所属ジムの公式サイトで謝罪の文書を発表した。
昨年12月18日、中国・武漢でティックトックやユーチューブで活動するキックボクサー玄武とスパーリング戦に臨んだが、内容は玄武側のラフファイトが目立った。ボクシングルールを逸脱し、木村は1回から足払いでキャンバスに倒された。2回にも足払いで倒された後、バックドロップで投げられて頭から落下。首を痛めて試合続行不可能となっていた。
帰国後の自主隔離期間中のため、木村は文書を通じて経緯を報告。17年7月、中国上海で08年北京五輪、12年ロンドン五輪ライトフライ級金メダルのWBO世界同級王者鄒市明(中国)に11回TKO勝ちした後、中国プロモーターのリウガン氏にマッチメークを依頼。今回、同氏からボクシングの試合を12月から春先をめどにマッチメークするとの提案を受けて中国入りしていたという。
木村は「中国でボクシングトレーニングに専念する環境下に自らを置く目的で中国にいきました。そこで中国マーケットを再開拓するプロモーションという事で、国際ボクシングルールに基づいた14オンスグローブを使ったスパーリング待ちを提案されました。それが今回のスパーリングマッチでした」と説明した。しかし試合直前、興行的な側面から一方的に何らかの変更がなされてしまったようだ。
さらに木村「厳格なコロナ対策がなされている中国に入国したのは、このスパーリングマッチを行うためではなく、『なんとしても、もう1度世界のベルトを巻く』、そのための渡航でした」と心境を吐露。
「今回の玄武選手の反則行為は許しがたい事です」とした上で、中国は世界戦にも臨んだ思い入れのある場所でもあり「鄒市明戦以降、日本人である私に対して、私のことを知り、そして、応援してくれる中国にいる多くの方々を愛する気持ちに変わりはありません」と結び、謝罪した。
1月3日未明には、元K-1ウエルター級王者久保優太(34)が自らのユーチューブチャンネルを更新。昨年大みそかRIZIN33大会でユーチューバー格闘家シバター(36)との敗戦後から起こった“八百長疑惑”について謝罪した。シバター側から出場辞退騒動を起こされた後、SNSや直接電話を通じて“台本”のお願いがあったことを認めた。
「100%(の力を)出してしまってもいいのかとか、これでダメ、台本というのはやりませんという風に提案を蹴った時、スポンサー様だったり、既にチケットを買ってくださっている方々、応援してくれている方々、準備してくださった方々に迷惑をかけてしまうのではないかという強迫観念にかられて、さまざまな思い、葛藤が自分の中で正直ありました」と明かした。
最終的には「当たり前ですが、100%、120%、相手を倒すつもりで17年間、プロとして活動してきました。今回は情けないですが、シバターさんの陽動作戦に、SNSだったり、直接のお電話だったりで、自分自身が100%の気持ちを作れずにリングに上がってしまったことが原因だと思います」と深々と頭を下げていた。
木村、久保は、いずれも自らの適正階級よりも約3~4階級上という体格の大きいユーチューバーと対戦するというハンディを背負ってリングに立っている。コロナ禍で元王者であっても簡単にはリングに上がれない状況下。プロが試合を求めて変則的なファイトを行わなくてはならない理由はあると感じる。ただプロ選手たちが次々と謝罪に追い込まれてしまう現実はあまりにも悲劇だと感じてしまう。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)


