大相撲の夏巡業が8月いっぱいで終わった。立行司の39代木村庄之助(63=九重)に、約1カ月に及んだ巡業の印象に残った出来事を聞いた。北海道で食べた海鮮丼だろうか、それとも庄之助が好む地方のがらくた市だろうか。そんな答えを期待していると、全く違う言葉が返ってきた。
「函館から新青森に移動する日だったのですが、乗る予定だった列車が大雨で運休になったんです。輸送担当の行司が本当に一生懸命やってくれました。私も心配してみていましたが、おかげで青森に移動することができました」
後輩の行司たちをねぎらうエピソードだった。
8月19日のこと。次の巡業先に向かう移動日だった。力士ら約200人の大相撲一行は、2班に分かれて函館から青森に移動する予定だった。
最初の班は、午後0時48分新函館北斗駅発のはやぶさ24号に乗車する予定だったが、大雨の影響で運休となってしまった。函館市のホテルから一行は観光バスで新函館北斗駅に向かっている時に連絡が入った。
行司は20人以上が同行しており、そのうち輸送担当は5人。幕内格行司の木村元基(57=湊)ら輸送担当の行司は、旅行代理店と連絡を取り合い、次善策を練った。代理店はJRに交渉し、結果的に第2班が乗る次の新幹線に全員が乗ることができた。新函館北斗駅での足止めは、2時間程度ですんだという。
元基は「輸送担当だけでなく、行司の仲間が動いてくれて、親方も力士も若者頭もみんなが協力してくれました。せかされたりしたら、こちらも焦る。そういうことはなく、天候だから仕方ないよねということで、(巡業部の)境川部長(元小結両国)を筆頭に、皆さんがでんと構えてくれたんです」と回想した。
新函館北斗駅は、大きな駅ではない。そのため、バス会社は駐車場にバスを止めたままにして、力士らが休んだり、時間をつぶしたりできるように急きょ配慮してくれた。
冒頭の庄之助の言葉を伝え聞いた元基は「もったいない言葉です。そう言っていただき、ありがたい」とかみしめていた。【佐々木一郎】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)


