「レインメーカー」が金字塔を打ち立てた。IWGPヘビー級王者オカダ・カズチカ(30)が、挑戦者棚橋弘至(41)との「V11対決」を制し、歴代最多の12度目の防衛を果たした。6年前にV12を止められた因縁に燃えるエースを、最後は34分36秒にこん身のレインメーカーで返り討ち。新日本をさらなる高みへ導くため、これからも王道をまい進する。

 黄金週間に黄金のテープが舞う。その中心には12度目の金の雨を降らせたオカダが仁王立ちしていた。「V12、達成しました。俺は正直記録にはこだわりがないんでね、しっかり王者の姿を見せていきますよ」。発汗激しく、体は紅潮するが、盤石の王座は揺るがず。試合途中には強すぎるゆえのブーイングを楽しむように笑みまでこぼした。ハイフライフロー、ドラゴンスクリュー。棚橋の大技を受け止め、はね返し、最後はロープに走ろうとした棚橋のタイツをつかみ引き戻すと、鬼気迫る表情でレインメーカーをぶち込んだ。

 ここは通過点。ある確信がより一層の高みを目指させる。先月8日、米国ルイジアナ州ニューオーリンズにいた。プロレス界最大の祭典WWE「レッスルマニア」で、「CHAOS」の先輩の中邑真輔がメインのWWE王座戦で争う姿を目に焼き付けながら思った。「負けてない。俺たちは必ずここまでいける」。観衆7万8133人の熱狂にも、培ってきた自負は揺らがなかった。「新日本が見せているものは負けていない」。演出面に差は認めるが、リング上の試合内容は上をいっていると思えた。

 昨年から団体が進める米国進出で看板役を担ってきた。持論がある。「野球の巨人が米国でやる、Jリーグのチームが欧州でやる。それでは人は埋まらない。でも、プロレスなら埋まる。それだけのパワーがある」。日本の文化として輸出して勝負できる。3月にロサンゼルスに新日本の道場ができた。「一番刺激になった。家ができた」と何より誇るのは持論ゆえだ。

 記録でも未踏域に入ったが、試合でも新領域を持ち込む。次戦6月9日の大阪大会の相手にオメガを指名。防衛ロードで唯一60分引き分けの宿敵をリングに呼び込み、時間無制限、さらにIWGPでは初の3本勝負を決めた。「俺が王者じゃなかったら海外にも行けていない。中心じゃないとどんどん上には行けない。素晴らしい王者を見せていきますよ」。ふてぶてしく満ちる自信。米国で高ぶった確信を現実にするために、雨を降らせ続ける。【阿部健吾】