昨年12月にデビューした今井礼夢(16)がプロ初勝利を挙げた。4対4のイリミネーションマッチに出場し、最後に新井健一郎とのマッチアップ。「とっさに思いついた」と、新井がレフェリーともめている隙に後ろから襲撃。26分0秒、逆さ押さえ込みで初の3カウントを奪った。

勝利を確認した瞬間、天を見上げてガッツポーズを見せた。戦った仲間3人もリングに上がり、礼夢の手を高々と上げてたたえた。リング上で通訳を通して「やっと勝ちました。本当にうれしい」と喜びを伝えた。元SPEEDで参院議員の母・絵理子氏は来なかったが「『初めて勝ったよ』と報告して、焼き肉に連れて行ってもらいます」と目を細めた。

実力者の新井から奪ったことにも価値がある。現在新井は天龍プロジェクトのIJタッグ王者に輝くなど絶好調の相手。これまでも何度か対戦経験があり、たたきのめされてきた。「やりたいことが見えてこない」と厳しい評価を受けることもあったが、この日は違った。序盤から力強いパンチを繰り出した。ハンマーロックで左腕を痛めつけられてもこれまでのようにギブアップはしなかった。負けた人から退場していくイリミネーションマッチながら、これまでの最長となる26分を戦って勝利した。

次戦は9月17日川崎大会(とどろきアリーナ)で、全日本プロレスで活躍するヨシタツとシングルマッチを行う。負ければ、絵里子氏がヨシタツキングダムに入り、ディーバになるという条件付きだ。今井は「自分が勝つので、そんなことにはならない。ヨシタツ選手との試合、ぜひ勝ちたいと思っている」と力強く語った。すでにヨシタツのWWE、全日本時代の映像を見て研究しているという。

生まれつき先天性難聴という障害を抱えながら、毎日1人で道場に通い、プロレスに打ち込んできた。道場マッチなども含め、30戦以上も負けが続いていたが、周りのスタッフも「嫌な顔もせずに必死について行こうとしている」と自覚も出てきた。デビュー時から体も一回り大きくなり「力も付いてきた」と成長を感じている。技の技術、力強さも身に付けた。「初勝利は自信になった。次戦に向けて、いつも以上に練習量を増やす」。自身の2勝目と、母のコスチューム姿を阻止するため、明日からまたトレーニングを始める。【松熊洋介】