大相撲の横綱日馬富士(33=伊勢ケ浜)が鳥取市内で平幕貴ノ岩に暴行し負傷させた問題で、鳥取県警が現場となった飲食店など関係者の事情聴取を始めたことが15日、捜査関係者への取材で分かった。県警は傷害容疑で捜査し、日馬富士の聴取時期などの検討を進めている。

 日本相撲協会の執行部は2日に情報を把握したことが判明しており、対応の遅さが混乱に拍車を掛けた。

 協会の春日野広報部長(元関脇栃乃和歌)は日馬富士関が15日に東京へ戻ったことを明らかにした。師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)から報告を受けた。春日野部長は、日馬富士と貴ノ岩は九州場所を休場中のため、警察の事情聴取を含めた本場所中の捜査協力について「もちろん問題はない」と支障がないとの見解を示した。

 14日に一部報道で暴行が発覚し、日本相撲協会執行部は両力士の師匠である伊勢ケ浜親方と貴乃花親方(元横綱)から事情を聴いた。だが情報把握翌日の3日に両親方へ電話で聞き取りを試みた鏡山危機管理部長(元関脇多賀竜)は「2人とも分からないと言っていた」と情報収集には程遠く、動きが止まった。

 報道されるまで2人の師匠を呼び出さず、両力士には接触していない。八角理事長(元横綱北勝海)は「対応が遅れたとは思っていない」と話したが、初動の遅れは否めない。

 巡業部長を務める貴乃花親方は、10月下旬に提出した被害届の件を14日まで協会に報告しなかった。初日から休場する場合、本来なら本場所2日前に提出すべき貴ノ岩の診断書が本場所2日目まで遅れた点も不可解で、真相究明が待たれる。

 50代の部屋持ち師匠は「暴行が事実であれば場所前から日馬富士を出場停止にし、師匠は降格。報道が出るまで動かない姿勢は隠蔽(いんぺい)と言われても仕方ない」と批判する。

 関係者によると、協会執行部は15日午後も対応を協議したが、調査に進展はない。警察の捜査が進む中、角界には「日馬富士は引退するしかない」との声もある。