元大関琴奨菊(36=佐渡ケ嶽)が大相撲11月場所8日目の15日、現役を引退し、年寄「秀ノ山」を襲名した。オンライン会見に臨んだ秀ノ山親方は「体が言うことを聞かず、ここが自分の終わりかなと思った」と引退理由を明かした。

幕内下位だった9月の秋場所で、左ふくらはぎを肉離れするなどし15年ぶりに十両に陥落した。幕内復帰を目指した今場所は、5日目終了時点で1勝4敗。実はこの時点で、師匠の佐渡ケ嶽親方(元関脇琴ノ若)に引退の意向を伝えたという。しかし、再起を促されて6日目の土俵へ。ただ「(6日目に)朝起きてみたら体が言うことを聞かなかった。両国国技館に行く車の中で『勝っても負けても最後にします』と師匠に伝えました」と明かした。

晴れやかな表情は、思い出の一番を問われて変わった。「幕下の時とか下の時に…」と話すと、右目に光るものが。続けて「厳しく胸を出してくれた兄弟子とか師匠の思いとか、苦労した時の方が思い出。思い出の一番は全てです」と話すと右目から涙を流した。

波瀾(はらん)万丈だった18年間の土俵人生。「まだできるなら相撲を取りたいのが本音。稽古場に行くとみんなが普段通りにしているのがうらやましい」と土俵との別れを惜しんだ。今後は、佐渡ケ嶽部屋の部屋付き親方として後進の指導にあたる。「壁にぶつかる子がたくさんいる。その先の光景を見せられるような指導をしたい」と、自身の経験を次の世代に伝えていく。【佐々木隆史】

▽十両の松鳳山(琴奨菊と同じ36歳)「同級生の兄弟子で、年代のトップを走り続けてきた人。お疲れさまでしたと言いたい。自分はまだまだ区切りをつけるにはほど遠い」