綱とりに挑む大関貴景勝(24=常盤山)が、2敗目を喫して窮地に立たされた。同じ突き押し相撲の大栄翔に圧力が伝わらず、はたき込みで敗れて初日から2連敗。1場所15日制が定着した49年夏場所以降、初日から2連敗以上した優勝力士はいない。データ上ではV確率が0%となり、苦しい状況となった。

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これが綱とりの重圧か。貴景勝は淡々と「終わったのでまた明日、集中していきたい」と前を向いたが、最高位への道が険しくなってきた。平幕の大栄翔に敗れて、3大関では唯一の初日から2連敗。連敗発進は自身にとっても18年秋場所以来13場所ぶりと、大事な場所で大きくつまずいた。

初日の御嶽海戦と同じく、立ち合いの馬力が不足していた。のど輪を交えた大栄翔の伸びのある突きで起こされ、持ち味の低い体勢を保てない。両足がそろうと、相手のはたきをまともに食らって前にばったりと倒れた。優勝した昨年の11月場所では出足で圧倒する場面が目立ったが、今場所は2日連続で立ち合いで当たり勝てない。内容については「負けた理由があるので」と、貴景勝の言葉は少なかった。

高いレベルの優勝が求められる様相の中で、痛すぎる2敗目だ。横綱昇進の内規は「2場所連続優勝、もしくはそれに準ずる成績」だが、昇進を預かる審判部の伊勢ケ浜部長(元横綱旭富士)は場所前、慎重に言葉を選んでいた。「レベルの高い優勝、全勝(優勝)したら上がるとか、はっきり言われると困る。決まっていることではない」。先場所から横綱との対戦がないことも言及。貴景勝自身に責任はないものの、今場所も両横綱が不在なだけに優勝時の星数や、取組の内容が一層注視される。

土俵下で取組を見守った幕内後半戦の錦戸審判長(元関脇水戸泉)は、厳しい見解を示した。「(綱とりは)うーん…かなり厳しいんじゃないかな。まだ何とも言えないけど」。一方で過去には栃錦や柏戸ら、初日黒星からの昇進成功は6例ある。40年前の81年名古屋場所では、千代の富士が2日目から14連勝して昇進の機運を高めていった。同審判長は「まだ終わっていない。後半勝っていければ印象も変わってくる」と、立て直しを期待した。

苦しいスタートだが「まだ13日間ある」と、初日から貴景勝の声のトーンは変わらない。前例のない連敗発進からの綱とり成就へ、諦めるつもりはない。【佐藤礼征】