新横綱の照ノ富士(29=伊勢ケ浜)が、初陣を飾った。結びで小結逸ノ城を難なく寄り切って白星発進。取組前には初めて観客を前に不知火型の土俵入りを披露し、大きな失敗もなく堂々と務めるなど幸先のいい初日となった。

部屋に新型コロナウイルス感染者が発生して白鵬が休場し、一人横綱として務める今場所。貴景勝、正代の両大関が黒星発進となった中で、最高位として土俵を締めた。

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文字通りの“横綱相撲”だった。相四つの逸ノ城に対して、得意の左前みつを強烈に引きつけると、一気に体を寄せた。大関陣が立て続けに敗れた中で迎えた結びの一番となったが、波乱の予感は一切なかった。

取組同様に注目された土俵入りも、堂々と務めた。不安を抱える両膝に、厳重にテーピングを施して登場。明治神宮で初披露した先月の奉納土俵入りと比べて6秒長い、1分48秒をかけて師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)直伝の不知火型を披露した。独特の緊張感に「思ったより雰囲気が慣れなかった」と首をひねったが、大きなミスはなし。17年春場所の稀勢の里以来4年ぶりに誕生した新横綱の晴れ姿に、会場からも大きな拍手が巻き起こった。

“日本人”としても初めての一番だった。場所前の8月4日に日本国籍の取得が官報で告示され、引退後に親方として協会に残る資格を得た。国籍変更を考え始めたのは、序二段まで番付が転がり落ちていたころだったという。「(前回大関だった)一番いいときはそういうのも考えたこともなかった。若かったもので。その中でどん底に落ちて、落ちたときでも支えてくれた方々と相談した」。決断を後押ししたのは、復活を支えた周囲への感謝。「新たに今、この自分の相撲人生の中で学んできたことをまた次に伝えていけるチャンス」と将来を描いてきた。

心機一転の場所となるが、重圧の大きさもこれまでと違う。新横綱の一人横綱は93年春場所の曙、03年春場所の朝青龍以来だが、2人はともに10勝止まり。過去の名横綱も苦しんだ中で、照ノ富士は「できることをやって頑張るしかない」。歴史的な復活、昇進劇を見せてきた男が、新たなドラマをつくる。【佐藤礼征】

◆不知火型 せり上がりの際に、両手を左右に開く。積極的な攻撃を示すものといわれ、背に回った結び目の輪は2つ。第11代横綱不知火光右衛門の豪快かつ優美な型を踏襲したといわれるが、現在の土俵入りは第22代横綱太刀山の型を基にしている。