大横綱のまげ姿も、いよいよ最後となる。

元横綱白鵬の宮城野親方の引退相撲が28日、東京・両国国技館で開かれる。史上最多の45度の優勝や幕内通算1093勝など数々の記録を樹立した同親方だけに、引退相撲は発表当初から関心が高く、チケットはあっという間に売り切れた。注目度が高い節目の催しを、いくつかの視点から紹介する。

●母の誕生日に

現役引退から1年が経過した、昨年9月5日。オンライン会見で宮城野親方は、23年1月28日に東京・両国国技館で「白鵬引退宮城野襲名披露大相撲」を開催すると発表した。

開催日は母タミルさんの75歳の誕生日。節目の日に大横綱の“最後の勇姿”を見せる意欲を示した。

●500万円の超高額チケットも

引退相撲の発表から2カ月後の昨年11月1日からは、チケット販売がスタート。最後の大銀杏(おおいちょう)にはさみを入れられる特別体験プログラムも販売した。

500万円と100万円のコースを設け、宮城野親方との食事会やVIP専用ラウンジの利用など豪華体験を味わえる内容になっているという。

複製不能なデジタル資産「非代替性トークン(NFT)」を利用した特典も用意されているなど、今までにない取り組みを積極的に活用している。

●「最後の土俵入り」は? 断髪式は?

当日は十両土俵入り→十両取組→白鵬最後の土俵入り→断髪式→幕内土俵入り→中入り。スケジュールは午前10時開場、同11時取組開始、午後4時打ち出し(予定)。

「最後の土俵入り」と銘打った横綱土俵入りでの太刀持ちと露払いにサプライズ起用はあるとされている。

さらに「400人の半分くらいになるんでしょうかね」という断髪式の参加者にも注目が集まる。

現役時代から各ジャンルの著名人との親交が深かった同親方だけに、そうそうたる顔ぶれが並ぶだろう。

●記念グッズも充実の35種類。当日はネット販売も

会場内でしか購入できない引退記念グッズも販売する。チョコレート、トートバッグなど定番グッズだけではない。スマホケース、缶バッジ、バスタオル、マグカップ、映画「ミニオンズ」とのコラボTシャツなど。その数は実に35種類に及ぶ。

当日現地に来られないファンのためにECサイトからの購入もできるようにする。

●宮城野親方「みんなが、来て良かったと喜んでもらえるように」

初場所中に報道陣の取材に応じた宮城野親方は「無事成功に、みんなが、来て良かった、応援して良かったと喜んでもらえるような、そういうお返しをできるように考えてやりたい」と意気込んでいた。

体の仕上がりについて、「引退してから10キロくらい落ちましたからね」。当日に向けて筋トレやまわしを締めて稽古をするなど、着々と準備をしていた。

初場所で幕下15枚目格付け出しデビューした落合(19)が7戦全勝優勝を果たし、春場所(3月12日初日、エディオンアリーナ大阪)で新十両昇進を決めた。

昭和以降初となる所要1場所での十両昇進を果たした愛弟子から、引退相撲を控える中で届けられた吉報となった。

場所前からまげ姿のうちに、落合の新十両昇進会見に臨みたいと言っていた。25日に現実となり、「これ以上のプレゼントはない。落合に感謝したい」と感慨深そうに語っていた。

愛弟子からもらった最高のプレゼントの喜びをかみしめながら、大横綱は20年以上結ったまげとの別れの時を迎える。【平山連】

◆白鵬翔(はくほう・しょう)本名同じ。1985年3月11日、モンゴル・ウランバートル生まれ。ムンフバト・ダバジャルガルと名付けられる。00年10月来日、01年春場所初土俵。04年初場所新十両。同年夏場所新入幕。大関昇進した06年夏場所で初優勝。07年名古屋場所で第69代横綱昇進。優勝45回など史上1位の記録が多数ある。21年9月に現役を引退し、年寄間垣を襲名。先代宮城野親方(元前頭竹葉山)が22年8月に日本相撲協会の65歳の定年を迎えるため、同年7月に名跡交換し部屋を継承した。通算1187勝247敗253休。金星1個、技能賞2度、殊勲賞3度、敢闘賞1度。19年9月に日本国籍取得。得意は右四つ、寄り。192センチ、155キロ。父ムンフバト氏(故人)はメキシコ五輪レスリング銀メダリスト。

◆引退相撲 力士が現役を退く際、引退を関係者に披露するために行う花相撲。コロナ禍前は引退発表から半年~1年ほどの間に行われてきた。まげを落とす断髪式がメインで、通常は引退および年寄襲名披露相撲となる。力士会の会員になって30場所以上務めた者は国技館の土俵で開催できる。土俵を使えない場合は国技館内大広間やホテル、時には部屋での断髪式とパーティーが通例。必要経費を除いた収益は引退した力士に入る。横綱の引退相撲の際には横綱土俵入りが行われるほか、断髪式では300人以上がはさみを入れるなど、大々的に行われる。