大相撲の元小結千代大龍で、昨年11月の九州場所中に引退した明月院秀政さん(34)が、力士のセカンドキャリア支援に新風を吹き込む。

引退から2カ月という驚異的な早さで、東京・六本木の一等地に、焼き肉店「みいとらんど」を1月16日にオープン。7日は報道陣を招いて試食会を行った。その中で「引退した力士がうちの店で働いてノウハウを学び、故郷に持ち帰ってチェーン展開すれば、その力士にとっても、うちにとってもいい」と、独立支援の考えを明かした。

明月院さんは、日体大から九重部屋に入門前から、力士の引退後の生活の不安定さを懸念し「教員免許も取っていた」という。親方として日本相撲協会に残るのは一握り。引退前から好物でもある焼き肉店経営を視野に入れている中、引退直後に「いい物件を見つけたので」と、前身も焼き肉店だった場所で、改装も最小限で済んだとあって、順調に開店にたどり着いた。

パリで12年間修業した人気フランス料理人の中村聡司さん(35)を招き「フレンチ焼き肉」という新境地に挑戦中だ。紹介&予約制で1万5000円のコースのみだが「一流シェフが定期的にメニューを変える。フレンチの後に焼き肉を楽しむスタイル」と予約は殺到。味は力士仲間も太鼓判で、引退力士の支援を含めて「やりがいがある」と笑顔で話した。

連日、千葉県にほど近い都内の下町の自宅から、往復ともに電車を利用しているという。この日は、仕事着としているシャツやジャケットなどが入ったカバンを、電車の網棚に置き忘れたため、イレギュラーなジャージー姿での取材対応となり「すみません」と、現役時代と変わらない愛嬌(あいきょう)のある笑顔を見せつつ、頭をかいた。

予約&紹介制とあって電話番号は非公表となっている。だが「ありがたいことに、ファンの方で『どうやったらお店に行けますか』という問い合わせをいただいているので」と、2、3月は自身のインスタグラムのフォロワー限定で、紹介がなくても予約して入店できる方向で調整中。「自分のキャラ的にも『大衆店』もやりたい。2000~3000円で、焼き肉をおなかいっぱい食べられるような。学生が多い八王子とかがいいですね」。引退した力士の受け皿を広げる意味でも、事業拡大に意欲をのぞかせていた。【高田文太】