大相撲で幕内優勝1度、最高位関脇の逸ノ城(30=湊)が、電撃引退を決意したことが分かった。4日にも、日本相撲協会に引退届を提出する。逸ノ城は3月の春場所で14勝1敗の好成績を収め、十両優勝。夏場所(14日初日、東京・両国国技館)は西前頭13枚目に番付を上げ、2場所ぶりの再入幕を果たしていた。慢性化していた腰痛が、引退の理由だという。2日に話し合い、結論を出した。モンゴル出身の逸ノ城は日本国籍を取得しているが、年寄名跡を取得していないため、親方として残ることができず、日本相撲協会を離れることになる。

逸ノ城は鳥取城北高に留学し、卒業後の14年1月、初場所で幕下15枚目格付け出しでデビューした。所要2場所で新十両に昇進。新十両で迎えた同年夏場所では、いきなり十両優勝を果たした。さらに十両を2場所で通過し、新入幕の同年秋場所でも、いきなり13勝2敗の優勝次点。横綱鶴竜を破り、金星まで獲得した。「怪物」と騒がれ、ほどなくテレビCMにも起用されるなど、人気、知名度を急上昇させていた。

関取衆最重量の220キロ前後の大きな体と、得意の右四つから、金星は現役最多、歴代10位の9個を獲得した。一方で大きな体を支える腰への負担は大きく、慢性的に腰痛を抱えていた。そんな中で昨年7月の名古屋場所では、悲願の初優勝を果たし、再び脚光を浴びた。先場所は大関経験者の朝乃山との争いを制し、十両優勝も飾ったばかりだった。

一方で1月の初場所は、新型コロナウイルス感染対策のガイドライン違反で、1場所の出場停止処分を受けていた。外出禁止となっていた20年11月、21年8月に無断で2度、外出したことが確認されたため。同時に師匠の湊親方(元前頭湊富士)夫人への暴力、その後の確執、さらにはアルコール依存などについても協議された。暴力について、相撲協会は「一部、事実関係を確認した」と発表。ただし「悪意の暴行ではなく、いずれも5年以上前の出来事であり、それ以後の暴行はなかった」と続け、その点についての処分はなかった。

4日は両国国技館で横綱審議委員会(横審)の稽古総見が行われるが、逸ノ城は不参加となる。2日の力士会は無断で欠席していた。

◆逸ノ城駿(いちのじょう・たかし)本名・三浦駿(2021年9月に日本国籍取得前はアルタンホヤグ・イチンノロブ)。1993年4月7日、モンゴル・アルハンガイ県生まれ。ゲルと呼ばれる移動式住居で生活する遊牧民で13歳からモンゴル相撲に取り組んだ。2010年に横綱照ノ富士らとともに来日して鳥取城北高に相撲留学。卒業後は鳥取県体育協会に勤務しながら同校相撲部でコーチを務め、13年全日本実業団選手権を制覇。湊部屋に入門し14年初場所、幕下15枚目格付け出しで初土俵。所要2場所で十両昇進、同4場所での新入幕は歴代2位タイのスピード記録。新入幕場所で13勝し翌場所関脇になった。所要5場所での新三役は歴代1位のスピード記録。22年名古屋場所で幕内優勝を果たした。得意は右四つ、寄り。192センチ、211キロ。