大相撲で歴代最多45度の優勝を誇る、元横綱白鵬の宮城野親方(40)が、日本相撲協会を退職することが正式決定した。

同協会は2日、東京・両国国技館で臨時理事会を開催。宮城野親方が9日付で退職すると発表した。宮城野親方が師匠を務めていた旧宮城野部屋で昨年、弟子だった元前頭北青鵬の暴力が発覚。監督責任を問われ、2階級降格などの処分を受け、部屋は閉鎖、昨年4月に師弟ともに伊勢ケ浜部屋に転籍していた。部屋再興の道筋が見えずに退職を決意したが、この日、協会が発表した文書とは食い違った。後味の悪い形での退職となった。

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横綱が、また相撲界を去ることになった。この日の臨時理事会で、宮城野親方から9日付で提出されていた退職願を協議。昨年4月から閉鎖、伊勢ケ浜部屋預かりとなっている、旧宮城野部屋の力士の処遇も話し合った結果、退職願を受理するとを全会一致で承認した。平成以降に誕生した横綱は13人。現役の豊昇龍と大の里を除き、引退した11人のうち宮城野親方は曙、貴乃花、若乃花、朝青龍、日馬富士に次ぐ6人目で、過半数が去る異常事態だ。

昨年4月の閉鎖から1年が経過しても、宮城野部屋の話題は理事会で出ず、再興の道筋が見えなかったことが退職を決意させた。この日の理事会では、9日付で照ノ富士親方が年寄伊勢ケ浜と伊勢ケ浜部屋を継承することも決定。宮城野親方は退職を踏みとどまっていたら、モンゴル出身の後輩横綱の下で部屋付きとして指導することになっていた。これまで親方業を学んできた伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)が、来場所前に定年を迎えるための代替わり。指導歴の浅い後輩親方に“親方業を学ぶ”という状況に、違和感を覚えたことも退職へと傾かせた。

ところがこの日、協会は「八角理事長(元横綱北勝海)より『今後は浅香山部屋で預かること、準備期間も踏まえ、預かりの解除を11月場所後とすることを検討するように』と指示があり、その方向で宮城野に説明し、幾度となく思いとどまらせるよう話をしたが、宮城野は退職の意向を示した」との文書を発表した。元大関魁皇が師匠の浅香山部屋への転籍、年内の再興ともに多くの関係者は「聞いたことがない」という。

文書では「弟子の指導に身が入っていない」との記述もみられた。一方で昨年4月の部屋閉鎖時に21人いた旧宮城野部屋の力士が、現在は9人となり、宮城野親方は心を痛めていたのも事実。今年の春場所後、各力士に丁寧に退職の意向を伝えた。現役終盤の独善的な振る舞いは影を潜め「ダメな親方ですから」と、自虐的に話すことも増えた。退職理由の根底を覆され、弟子を軽視しているような発表をされ、現在はモンゴルに滞在中の宮城野親方がどう発言するか。9日の記者会見はグッとのみ込むのか、反論するのか対応が注目される。【高田文太】

◆元白鵬の宮城野親方の処分 昨年2月に弟子の幕内北青鵬による弟弟子2人に対する暴力行為が発覚。日本相撲協会は同月の理事会で、暴力行為を防げず、監督責任を果たせなかったとして、宮城野親方を委員から年寄への2階級降格と、3カ月の20%報酬減額の処分とした。同年3月の理事会では宮城野部屋を当面閉鎖とし、宮城野親方、部屋の力士らを伊勢ケ浜部屋に転籍させることを決めた。以降、宮城野親方は部屋付きとして、伊勢ケ浜部屋に通って後進を指導していたが、部屋再興を待たず退職となった。

◆定年後の親方の再雇用制度 日本相撲協会は14年11月に、希望する親方に限り65歳の定年退職後も70歳まで再雇用する制度を導入した。伊勢ケ浜親方はこの制度を適用。年寄伊勢ケ浜を照ノ富士親方に譲り、元横綱白鵬の退職で空いた年寄宮城野を襲名する。